暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜赤き皇が征く〜
第一章
str3『第一層の地でA』
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 迷宮区の壁に、ソードスキルのエフェクトライトが反射して、淡くきらめく。

「せやぁぁぁっ!」

 金髪の少女の手に握られ、剛と音を立てて振り払われた両手剣。ソードスキル《サイクロン》の一撃が、《ルインコボルド・トルーパー》二体を薙ぎ払った。激しいノックバックが発生し、二体の遺跡の犬面人(ルインコボルド)は動きを止める。

「スイッチ!」

 攻撃者であった金髪の少女――――シャルの鋭い叫びに応答して、クロスも両手剣を抜きはらう。ダッシュでルインコボルドに近づくと、大上段からの斬りおろし→切り上げの二連撃、《ブレイク・アーク》を放つ。

 斬撃に吹き飛ばされ、コボルド達は今だ動くことができない。だが、こちらは違う。パーティーメンバーであるシャルは技御硬直(スキルディレイ)から立ち直り、すでに次の剣技の準備に入っていた。

 これが、パーティー戦で最大の肝となる戦術(タクティクス)、《スイッチ》だ。一人が技を大きめの隙を作ることで、その隙に他のプレイヤーが入って、戦闘を引き継ぐ。その間に一人目は体制を整えたり、HPを回復したり、技御硬直(スキルディレイ)やスキル冷却時間(クーリングタイム)が終了するのを待つのだ。

 βテスト出身ではなかったらしいシャルだが、MMOゲームの基礎は比較的知っていたらしく、スイッチの扱いもうまかった。むしろクロスの方がパーティー戦に不慣れで、足を引っ張っているのかと時々思うくらいだ。

 クロスと入れ替わりで前に出たシャルが、《スマッシュ・アーク》を発動。両手剣の重量を生かした重めの打撃攻撃が、二体のコボルドを直撃。そのHPバーを消滅させることに成功した。

 両手剣ソードスキルの基礎技、横薙打撃の《スマッシュ》、縦方向打撃の《クラッシュ》、縦方向斬撃の《ブレイク》、そして横方向斬撃の《グレイヴ》。片手剣のように小回りの利くソードスキルは少ないが、どれも威力が高い。その上位剣技ともなれば、二連撃であるがゆえに威力だけでなく速度も上乗せされるため、より強力になっているのは必至のことであった。

 もうお分かりだろうが、シャルのメイン武器スキルは、クロスと同じ《両手剣》。聞いたところによればスキル熟練度も同じ様なものだそうで、お互いに相手の技の軌道や内容が解るため、パーティー組んで連携をするという面では非常にやり易かった。

 勿論、問題点もある。

 今現在クロスとシャルがいるのは、アインクラッド第一層迷宮区十九階だ。現時点では敵もまだそこまで強くなく、種類も少ない。

 だが今後、もっと上の階層へと登っていき、敵が強くなって、それやその技の種類が増えれば――――その時、全く同じ武器を使う二人きりのパーティーでは、対応し切れないかもしれない。

 と、そこまで考えて。
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