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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第十五話/SIDE-V 若人は日々成長する
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ば、顔パスでクレインとローエンのいる部屋まで行くことができる。ローエンとは異なる意味で、「クレインの脇を固める人物」程度には兵たちに認識されているらしい。

 軍議室に使っている部屋をノックし、返事を待たずに中に入った。
 中ではローエンとクレインが、リリアルオーブを使って話し合っていた。

「お帰りなさい、ヴィクトルさん」
「お帰りなさい」
「ああ。――進軍ルートの相談か?」

 彼らの外部交渉のおかげで大分戦力も増えた。ここからは大規模な集団を動かすための精細な指示を打ち合わせておく必要がある。その段階に至ったのは、果たして喜ぶべきなのか。

「イバルはいないのか」
「……少々難しい話が続いてしまったもので」

 ああ。基本的にまっすぐゴーだからな、イバルは。彼らが話し合う戦略やら戦術やらに目を回して逃げたというとこか。

「元々イル・ファンは南北に要害を擁しています。一つが、我々が拠点とするガンダラ要塞です」

 ローエンが指差したリリアルオーブの一点が点滅する。

「ですがイル・ファン自体は決戦都市としては造られていません。街の内部まで突破されれば敗色は濃厚です。なので、戦時下は兵の大半がガンダラ要塞と海上の防衛に配置されるようになっています」

 地図上のガンダラ要塞と海上の数か所が点滅する。

「ラ・シュガルの新兵器開発でア・ジュール王は開戦の準備を進めています。ラ・シュガル軍としてもア・ジュールが攻めてくる前にこのガンダラ要塞を奪還しようと考えるでしょう。裏を返せば、ガンダラ要塞攻略のためにイル・ファンの軍勢がここに押し寄せた時こそ、我々にとって王都攻略の最大の好機」

 戦局図が動く。赤い駒と青い駒がぶつかり合う。その間に緑の駒がイル・ファンへ移動した。

「ここを主戦場にしてラ・シュガル国軍とア・ジュール軍がやり合う間に、王都へ攻め上るわけか。さすが〈指揮者(コンダクター)〉。大胆な調べだ」
「それほどでも」

 ローエンは仰々しい礼を取った。変わらないな、そのかくしゃくとした笑顔。

 クレインはというと、指を顎にやって考え込むようにリリアルオーブを見下ろしている。

「――侵攻のタイミングを合わせられるよう、あちらの王と密約を結ぶことは可能だろうか」

 あちらの王というと、ガイアスか。そういえば分史世界でもア・ジュール王時代のガイアスとは出会わなかった。

「国益になると思わせれば叶うかもしれん」
「その国益は富ですか? 権威ですか? 人ですか?」
「人、だな」

 〈ガイアス〉は民を導くのが王の使命だと捉えていた節があった。富や権威には執着していなかった。

「ならば革命が成り次第、ラ・シュガル国軍を投降か撤退させましょう。無駄な争いはそれで
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