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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第十五話/SIDE-F わたしを全部あげていい
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つか必ずあの王に一矢報いてみせると。その時は僕も子供だったから、そう思うことの意味すら分かってなかったけど」
「あの王様のこと、昔からキライだった?」

 クレインさまは船べりに両腕を突いて苦笑した。

「――ナハティガルが王である限り、いつまでも民の苦しみや悲しみは断ち切れない。だから決起した。かといって、僕の指導者の資質なんて、ナハティガルにさえ及ばないだろう」
「クレインさま、王様にならないの? じゃあ、ラ・シュガルは……ア・ジュールにあげちゃうの?」

 王様、つまりガイアスに。わたしたちのいた歴史では、王様がリーゼ・マクシアの最高権力者だった。だったら〈ここ〉じゃあガイアスと戦わなきゃいけないのかもしれない。

 あのすごくすごく強かった王様にクレインさまが攻め込まれたら――わたし、歴史が狂っても、クレインさまの味方するかもしれない。

「今すぐじゃない。国には正しい指導者が必要だ。ア・ジュール王は最たる適任者だろう。だが問題ばかりの国を丸投げするわけにはいかない。せめて国内の中央集権や統治機構をどうにかしてから、ふさわしい人に王位に就いてもらいたい。いつか誰かに渡すために――僕はラ・シュガル最後の王になる」

 さいごの、王。

 とてもとても深く澄んだ響きのコトバ。ずっと先を見据えるまなざしが、なんだか急に遠く思えて。

「クレインさま!」
「ん?」
「わたし、わたしね、クレインさまのためなら、わたしのマナを全部あげてもいいと思ってる」
「え!?」
「フェイはマクスウェルだけど、デキソコナイのマクスウェルだけど。でも、今のフェイはクレインさまのものだから。この体も、この力も、ぜんぶ」

 間が空いた。ヘンな子、って思われた、かなぁ…?

 待ってると、クレインさまは少し笑って、わたしの片手を持ち上げた。
 クレインさまはそのままわたしの手の甲に、キスを、した。

 どくん、と。大きく、なんだか飛んでっちゃいそうなリズムで、心臓が、鳴った。

「出来損ないなんかじゃない。僕にとって君はまぎれもない『精霊』だ」
「フェイが……精霊?」
「君は僕ら人間が精霊の加護を求める時にこそ舞い降りた。だから、ありがとう、フェイさん。今この時、僕の傍らにいてくれて」


 ――はじめて。
 はじめて、居てもいいって、言われた。フェイを要るって言ってくれた。

 クレインさま、クレインさま、クレインさま。


 ローエンがクレインさまを呼んでる。クレインさまは行っちゃった。

 一人で潮風をどんなに浴びても、熱くて、あつくて、堪らなかった。
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