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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
2話 情報屋
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―という、何とも遣り切れない会話がありながら、どうにかトールバーナへと戻ることができた。
 しっかりと擬装用の装備に切り替えてから門を潜り、視界に【INNER AREA】と紫の文字が映し出され、《犯罪無効エリア》――――《圏内》に立ち入ったことが分かると、同時に肩が重くなるのを感じた。クエスト前に仮眠をとっていたとはいえ、疲れが溜まっていたのだろう。早朝にあたるこの時間にも拘らず、既に夕暮れ時のような疲労感がある。とりあえず、今日と明日は休養をとることとしよう。そう考えると宿代わりに使っている民家の一室が恋しくなってきた。

 ……と、そんなわけで兎にも角にも睡眠を享受したい一心で歩を進めるなか、ヒヨリが街中の《露天商》の前で立ち止まったのだ。何やら羨望にも似た熱いまなざしを一心に、雑多な品揃えの只中に注いでいた。


「なんだ、面白い装備でもあったか?」


 頭が働かないながらも地べたに広げられた絨毯の上を見渡すが、これといって有用な装備は見当らない。実のところ、こういった《露天商》は《正規の施設としてのショップ》とは異なり、それなりに固定された傾向を持つとはいえ《品揃え》と《価格》がランダムで設定される特性がある。大抵はポーションがショップで買うよりも少し安かったりする程度だが、極低確率で高性能なアクセサリーや武器といった《掘り出し物》が店頭に並んでいたりすることもあるのだ。その奇跡に巡り会ったプレイヤーの話はベータテスト時代に一度聞いただけだが、在庫が無限でなかったり、品揃えが変化するまでの時間さえもランダムであるため、不確定要素があまりに多い。ここでレア装備を狙うのはあまりお勧めはできない。


「燐ちゃん。私これ欲しいんだけど………ダメ?」
「なに?」


 リクエストは予想外のもので、思わず間の抜けた声が出てしまう。
 ヒヨリが指差した先にあったのは、銀細工の施された細剣でも用途不明の青い液体の入った瓶でもなく、フードの付いた深紅のケープだった。


「そんなに珍しいものではないだろ?」
「でも、あの女の子が付けてるの見てて可愛いかも、って思って………」


 言われて、ふと思い出す。キリトが救助した寝袋女――――もとい、女性プレイヤーが身に着けていたものと、細部は異なるが色や形状はよく似ているのだ。確かにフーデッドケープを身につけていた彼女は確かに美人であったが、それを真似ても、さながら《眠れる森の美女》と《赤ずきんちゃん》ほどの差が開きそうである。前者は王子様に助けられる真正のヒロインだが、後者は………不吉なので言わないでおこう。
 とりあえず値段を露天商に確認すると、なんと四十二コルだという。装備としてはプレイヤーから店に売却した際の値段かと見紛うほどの安値だった。価格だけで判断すればかな
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