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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第十三話/SIDE-V 黒騎士
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/Victor

 ――時は昼まで遡る。


「遠回しに言おうが着る者などあの娘一人だけだろう。どうして素直に娘のために仕立て直したいと言わないんだ」
「……言えるほどまっとうな父娘じゃないからだよ」

 産まれた瞬間から受け入れられなかった次女。マータ家に預けて目を背けていようと思ったのに、フェイリオは私の元へ帰ってきた。

 食事も服もオモチャも全てエルと同じ物を与えた。エルの予備なのだと。そう扱うことでフェイリオという個を否定しようとした。
 無視もした。冷たくもした。

 エルが湖に落ちた日には殴りもした。すると、次の日の朝にはフェイリオは消えていた。
 私はただほっとした。悲しみなどなかった。

 なのにあの娘はまた帰ってきた。しかもラルそっくりに成長して。エルの妹なのに、エルより年上になって。溝はますます広がった。

 死の瞬間でさえ、私はあれを「娘」と認められなかった。そんな男が、今さら父親面などできるか。

「あら。やっぱりフェイのためですのね。いつもこうして娘さんの服を仕立ててらっしゃるの?」
「いつもではないさ。いくら私でもそこまでは無理だよ。今回は、そうだな――上の娘には服もアクセサリーもいくらでも買ってやったが、フェイリオは全て上の娘のお下がりですませていたから。気まぐれだ」
「まあ! そういうことだったの。でしたらなおのこと、気合を入れて選ばねばいけませんわよ! きっとフェイも喜ぶわ」
「あ、ああ」

 エネルギッシュな女性だ。今は救われるよ、ドロッセル。君のその元気さ。


 キャアアアァァァァァ!!!!


 何だ? タラス間道への大通り方向から、わっと人が走ってくる。追って来たのは……ラ・シュガル兵。

「何ですか、あなたたちは!」

 ドロッセルがラ・シュガル兵の前に立ちはだかった。

 勇敢さはさすが領主の妹だが、感心して突っ立っているわけにもいくまい。
 いつでも攻勢に転じられるよう、ドロッセルの傍らに付いた。イバルも同じく、だ。……イバルにも読める空気がこの世に存在したのか。

「乱暴はおやめなさい! わたしはシャール家当主クレインの妹、ドロッセル・K・シャール。ラ・シュガル軍はこの街から退去するよう、領主クレインからの命を受けたはずですよ!」

 空気が戦慄いた気さえした。やるな、ドロッセル。そこらの貴族の姫君とは胆の太さが違う。

 すると兵団の奥から、一人の男が姿を現した。
 すぐさまドロッセルを腕の後ろに庇う。

「これは勅命による反乱分子掃討作戦。大人しくしていただきましょうか」
「反乱? わたしたちは何も…」

 あの男の鼈甲色の目。リーゼ・マクシア人には発現しない褐色系の虹彩だ。しかもあの色合い、どこか、本
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