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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
1話 巡り逢う黒
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く。その数字は与ダメージの3パーセント程度だが、ないよりはマシだ。

 このクエストが終わった帰り道、小石の塚に指輪が再出現しているのに気付いて判明したことだが、意外にも誰かがクリアしたら二度と出来ないような一回限定(ワンオフ)のものではないことが判明したのだ。装備している武器が優秀だったから二人でクリアできたが、他のプレイヤーも準備を整えれば十分に達成可能だろう。特定のクリア回数で消失するなどの条件があればその限りではないが。
 ともあれ、報酬の装備ボタンをタッチする。敏捷ステータス重視の革鎧(レザーアーマー)の上に、端が擦り切れて裾に向かうにつれて赤黒いグラデーションを見せるロングコートが、光を放ちながらという、コートの禍々しいデザインと打って変わって何とも不似合いなエフェクトでオブジェクト化される。だが、今回は着心地を確かめただけに止め、数分と経たないうちに元の装備に戻す。


「これで燐ちゃんの分も取れたね!」
「ありがとな。じゃ、いつも通り変えとけよ」
「うん」


 聞き分けの良い返事で、ヒヨリはもたつきながらも装備をドロップ品の《ウインドフルーレ》とケープに切り替える。
 俺もまた、同様に隠しダンジョンの最奥の宝箱に眠っていた片手剣《レイジハウル》を店売りの《ブロンズソード》へと切り替え、いくつかのアイテムを取り出す。
ヒヨリはをごちゃごちゃとした手元を見つめ、目を輝かせている。一度これを体験してから3日が経過したが、それ以降は簡素なものだった。それ故の期待なのだろう。


「頑張ったからな、今日は祝杯だ」


 子供のようにはしゃぐ――――十四歳は十分に子供な気もするが――――ヒヨリに手にしたブツの半分を手渡そうとしたとき、ちょうど迷宮区を視界に捉えていた俺にはそれが見えた。
 二足歩行で左右にフラフラ揺れながら、ゆっくりとした足取りで近づく何かの影である。足の細さに対して上半身が何かの塊を思わせる長さである。一見すると亡者(アンデッド)系のモンスターのような、それも人体の名残が一部のみ残っているような印象の外見だ。しかし迷宮区が月光を浴びて作り出す影の中にいるために、その全貌はつかめない。
 少数PTであるため――――ヒヨリの注意散漫も一因だが――――視界を補うという理由から取った
索敵(サーチング)》スキルの範囲には引っかからないくらいに彼我の距離は開いているのでカーソルを合わせることができないが、仮にモンスターである場合、ここにいては間違いなく戦闘が起こる。それに、この階層であんなシルエットのモンスターは記憶にない。SAOの正式サービスで新たに追加されたモンスターか。若しくは何かのフラグによって出現したネームドモンスターか。常識的に考えれば先のクエストの周回が怪しい。


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