暁 〜小説投稿サイト〜
IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-21
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話



束と鈴音が医務室からアリーナに移動して直ぐ、楯無に見つかった。


「ようやく見つけましたっ……! もう、勝手に移動されては困ります。篠ノ之博士」
「ははは、ごめん、ごめん。ちょっとこの子に用があってね」


そう言って、束は鈴音を楯無に紹介する。
鈴音から見れば、楯無とは初対面でよく知りもしないのだが、楯無からして見れば、生徒会長であるがゆえにある程度の個人情報まで知っている。中国という、少し日本との仲が険悪な国でそこの代表候補生なのだから日本に対して色々とやってくれているものだという先入観を持ってしまっていた楯無。
だが、実際に会ってみるとそんなことは出来そうもない勝気で真っ直ぐな少女。所属やデータだけで決めつけてしまっていたことに自分はまだ未熟であることを認識させられる。
自分のそんなところを痛感させられると同時にそんなことは表にも出さず、いつも通りに鈴音と挨拶を交わす。


束はそんな二人を尻目にアリーナへ目を向ける。だが、そこには御目当ての少年はおらず、別の少年がオレンジ色の機体と協力して相手を翻弄していた。
胸くそ悪いものを見たと言わんばかりに顔をしかめると、アリーナから楯無に視線を移した。


「ねえ、れんくんの試合は?」
「圧勝でしたよ。相手も代表候補生と決して弱くはないんですけど、所詮その程度ってレベルでしたね」
「なあーんだ、もう終わっちゃったのか。つまんないの」


束は興味ないと言わんばかりにアリーナに背を向けるように手すりに腰掛ける。
その隣で鈴音は、若干生気の宿らない眼で一夏を見ていた。再び自問自答を繰り返す。
鈴音自身、どうしてあんな奴が好きだったのか分からない。昔の自分が馬鹿だったのか、それとも昔のあいつが格好良かったのか。答えは前者だと決める。あんな奴に思いを馳せていた自分が馬鹿みたいだ。いや、馬鹿だった。ありもしない幻影を追いかけて来ていたのだ。やるせなさを感じる。
それでもあいつに感謝していることだってある。こうして束と出会うことが出来た。あいつの影を追いかけて来なければ、束には会わなかった。こうした出会いは大切にする鈴音。だから、当時の自分は出会いの鮮烈だった一夏に惚れてしまったのかもしれない。所謂吊り橋効果ってやつなのか。


アリーナでは丁度一夏のペアが勝ちを収めていた。しかし、それは少なくともここにいる三人の目には入っていない。世界各国が注目する中、束、楯無、鈴音の三人は別の男子に気持ちを寄せる。
彼の出番は、まだ先である。束は胸の高鳴りを抑えられなく。楯無は、強くなっていることにときめき。鈴音は若干の疑いと期待を。
手首に見つけている甲龍の待機形態であるブレスレットが日差しに照らされて光る。――――トーナメントはまだ始まったばかりである。

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ