暁 〜小説投稿サイト〜
バント
第四章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
「ゴロを打たせればいい」
「ですね、じゃあ」
「変化球でひっかけさせて」
「内野ゴロでゲッツー」
「それを狙いましょう」
 高田の周りのコーチ達も頷いてだった、そのうえで。
 高田はバッテリーにサインを送った、オレンジのユニフォームの彼等も頷く。そうしてだった。 
 ピッチャーはクイックで、大石がまだ塁から離れていない時に素早く投げた。それで大石を走らせなかった。
 これで新井にゴロを打たせてダブルプレーになる筈だった、だが。
 新井はここでだ、バットをだった。
 寝かせた、そのうえでキャッチャーのミットの前に置いた。それを見て。  
 誰もがだ、瞬時にしまったという顔になって言った。
「くっ、それか」
「バントですね」
「それできましたか」
「大石に気を取られ過ぎた」
 高田は苦々しい顔で言った。
「バントを忘れていた」
「送りバントですね」
「それですね」
「そういえばあいつは二番バッターだ」
 高田はこのことから言った。
「バントもな」
「普通ですね」
「普通に考えられましたね」
「大石の足と新井のヒットに気を取られ過ぎた」
 その二つにだ。
「新井のもう一つの技を忘れていた」
「そういえば新井は南海の頃からバントが得意でしたね」
「そっちの方も」
「それもかなり上手い」
 そのバントがというのだ。
「だからな」
「岡本さんもそれ使ってきましたね」
「新井のバントを」
「そっちを」
「ワンアウトは取れるがな」
 新井のバントは送りバントだ、だからだ。
 ワンアウトは取れる、しかしだった。
「大石は二塁に行く」
「これだと同じですね」
「ここでクリーンアップがヒットを打てば一緒です」
「一点入ります」
 新井はそのバントを成功させた、大石は二塁に進んでだった。結局彼が盗塁した場合と同じ状況になったのだった。
 その状況を見てだ、岡本はベンチの中で会心の笑みを浮かべて言った。
「これでいい」
「送りバントですね」
「これも戦術ですね」
「二番バッターは重要だ」 
 打線の戦術においてだ。
「一番バッターは出塁して得点圏に進むことだがな」
「盗塁もそのうちの一つですね」
「塁に進む為の」
「そうだ、そして二番バッターはだ」
 まさに新井である。
「その一番をホームに返すか進塁させる」
「一番が出塁していない時は自分が出る」
「それで、ですね」
「新井が重要になってくるんですね」
「うちでも」
「そういうことだ、新井のそのバントもな」
 自分はアウトになるがそれでもだというのだ。
「重要だ」
「大石を前に進める為に」
「得点につなげる為にですね」
「大石の盗塁がマークされているのならな」
 それならというのだ。
「バントだ、新井
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ