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クルスニク・オーケストラ
楽譜 Forth×Force
1譜 「4人」が出来上がるまで
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秘書業、無理があるぞ。

「あの社長の秘書か――新しい秘書長は酒に詳しいんだな」
「ど、どんな銘柄で酔うか把握しておかないと……大変なことになるかもしれませんから」
「どうなりますの?」
「ま、前にも言ったじゃないですかっ。私、泣き上戸なんですってば。何回目ですか先輩」

 前にも言ったからって今覚えてるか限らないのがジゼルだぞ。まだ《呪い》については詳しく話してないわけか。

「今日はせんぱい方にお願いがあってお呼びしましたの」
「何となく察しはつくけど、何だよ」

 後から来たユリウスは「?」を浮かべてる。はっ、脳天気で羨ましいこって。

「このヴェルの、男性恐怖症克服をお手伝いしてほしいんです」

 ジゼルはヴェルの両肩を後ろから掴んだ。ヴェルはまだまだ萎縮気味。

「社の看板のお二方とお話できるようになれば、どんな殿方とだって話せます。――大丈夫。ヴェルが有能なのは、わたくしがよーく存じていますから」





 ――それから、3人だった家飲み会に、ヴェルが加わって4人飲み会になった。

「……3、2、1、ゼロ! すごいわ、ヴェル。新記録。リドウせんぱいのお顔から目を逸らさず5分ピッタリ」
「はー。し、心臓が止まるかと思いました」
「じゃあ次は、ユリウスせんぱい、お願いします!」
「任せとけ」
「ふえぇ!? まだやるんですか!?」
「ノリノリだな、お前ら……」

 といっても、大半がヴェルの男性恐怖症克服に費やされたわけだが。……ま、これはこれでってことで。

「ちょ、ちょっと待ってください。心の準備しますから」

 ヴェルもだいぶ俺たちに対してハッキリ物を言うようになった。初対面当時はつっかえつっかえでしか話せなかったことを思い出せば大進歩と言えなくもない。

 このままいけばいずれヴェルにも、クルスニクのアレやコレを打ち明ける日も遠くないだろう。まだ3人だった頃、ユリウスが弟のことを明かした日と同じように。

「ユリウスさんはカボチャ、リドウさんはカボチャ……」

 ぐっさ→

 ぐっ……なんか久々に精神的ダメージがヒドイのを食らった気がするぜ。

 俺らくらいになると、派閥が出来る程度にはファンが付く。その辺の自負とか自信を、今のヴェルの「心の準備」は見事に叩き折ってくれやがった。

 ユリウスまで凹んでやがる。お前、一応トップエージェントのプライドあったんだな。
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