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SAO−銀ノ月−
第七十話
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「翔希ー、遅刻」

「まだ約束より十分も前だろ……」

 所沢市。自宅からは電車で数駅離れている、いかにも地方都市といった駅に降り立った瞬間に、俺はリズ――里香からのお叱りの言葉を賜った。はて、まだ約束していた時間よりも十分以上の余裕があるはずだが。

「こういう時は、男の子が早く来るべきじゃない?」

「知らん」

 そんな軽口を適当にこなしつつ、俺たちはほどなく駅前のバス停に停車したバスへと乗る。里香を窓際に、二人掛けの青い椅子に座ると、気だるげな運転手の声とともに、バスは目的地へと発車していく。

 あまり時間はかからずに目的地までは行けるようで、二年という歳月で様変わりした地方都市を――眺めている里香の横顔を――見つつ、俺は先日のALOのことを思い出していく。

 象水母型邪神《トンキー》の協力のおかげで、凍りついた地下世界《ヨツンヘイム》からの脱出に成功した俺たちは、遂に首都《アルン》――ラストダンジョンである《世界樹》がある町へと到着した。ALOの町の例に漏れず、夜中だろうと美しい光景が広がっていたが、それを楽しむほど俺たちに余裕はなく、さっさと近くの宿でログアウトすることとなった。

 ……とにかくユイの誘導に従って近い宿泊施設に寄ると、妙に値段が張ったり、何故か建物内に設えられた鍛冶屋にリズが吸い寄せられていったり、キリトの所持金が0だったりと一悶着はあったが。

 それはともかくとして、何とか世界樹まで辿り着く事が出来た。一刻も早くアスナについて調べたいところだが、残念ながらALOはこれからメンテナンスらしく、ログイン出来るのは速くても今日の午後。アクセス過多やメンテナンスが長引くなどの障害を計算に入れずとも、まだまだ俺たちはALOに入ることは出来ない。

 なので午前中はしっかりと休み、ALOに入る前に一度、エギルの経営する喫茶店《ダイシー・カフェ》でキリトにリズ、俺にエギルで情報収集をするということになっていた。だが、その情報収集前に里香から『頼み事』があり、俺たちは今ある場所に向かっている。

『――次は所沢総合病院前ー……お降りのお客様は――』

 運転手のやる気のない声に反応し、思索を終えて席を立つ。この町で一番大きな病院であるだけあって、身なりを気にしているような降りる客も随分と多い。そんな彼らに混じって市営バスから降りると、ホテルのような建物が俺と里香の前に立ちはだかった。

「ここ……よね?」

「ああ。俺もキリトから聞いただけで、来るのは初めてだけどな……」

 所沢総合病院。郊外の一等地に立てられたこの場所は、あの『SAO事件』の対応もしていたとのことだ。そして今、アスナが――結城明日奈が眠り続けている場所でもあるという。

 里香の『頼み事』とは、親友のお
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