第九話 はじめて見たツンデレその十三
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「その他にもです」
「大切なものは一杯存在しているあるな」
お金は生きものだと言っていた水蓮さんも答える。
「そうあるな」
「水蓮様もそのことは」
「わかっているあるよ」
はっきりとした明るい返事だった。
「安心するよろし」
「それでは」
「お金で全てが決まるのなら」
早百合先輩の言葉はというと。
「この世は非常につまらないものですね」
「左様です、様々なものがあるからこそです」
「世界は素晴らしいのですね」
「そうなのです」
こう早百合先輩に言うのだった。
「私はそう思っています」
「私の場合は」
先輩は自分の手を見た、その細いけれど先はへらの様になっている十本の整った指を最も見てそのうえで。
「ピアノでしょうか」
「芸術ですね」
「ピアノがなければ」
「早百合様は駄目ですね」
「確かに。お金は必要ですが」
それでもだというのだ。
「それ以上にです」
「音楽が大事ですね」
「お金がなくとも音楽があれば」
それだけでだというのだ。
「ピアノさえ弾ければ」
「早百合様は満足されますか」
「そう思います」
「その様にです、この世にあるものはお金だけではありませんので」
それで、と。畑中さんは話を終わりに進めていく。
「皆様もそのことはよくお考えになって下さい」
「お金だけでなく、ですね」
「はい」
「お金よりも他に大事なものがある」
「そこは人それぞれですが」
「僕も同じですね」
「無論です、義和様もです」
僕にもだ、いつもの様に話してくれた。
「人であるのなら」
「そういうことですね」
僕は畑中さんの言葉に頷いてお茶を飲んだ、アイスにしたお抹茶、お砂糖を入れたそれは不思議な味がした。けれど決してまずいものではなく僕はその不思議な美味しさ、日本のものでない様で日本のものであるそのお茶も飲んでからお風呂に入って歯も磨いて一日を終えた。この日も長い様で短い一日だった。
第九話 完
2014・8・20
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