暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第55話 Party-go-round
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「き、キリト君。わ、わたし、変じゃないかな? 髪型とか乱れてない?」

「大丈夫。いつも通りばっちり決まってるよ、アスナ」

「そ、そう? うーん……なら、服の着方は? 表情は? 不自然じゃない……?」

「それも大丈夫。強いて言うなら、ちょっとそわそわしすぎってとこかな」

 和人に言われ、明日奈ははっと我に返った。ちらっと横目に見たガラスに映った明日奈の頬は、鏡でなくともわかるほどに赤く色付いている。
 明日奈はぱんぱんと頬を叩き、少しばかり大げさな、むっとした表情を彼に向けた。

「なによ。キリト君のほうこそ、さっきからずっと爪先パチパチ言わせてるじゃない。見てたよ」

「こ、これはその、爪の垢を取っていたと言いますか……」

「こんなところで垢なんて落とさないでよ」

 明日奈は微々たるため息を吐き、その小さな拳をこつん、と和人の腕に当てる。そして、気になっていた"ある質問"を彼にぶつけた。

「ねえ、さっきまりちゃんと何の話をしてたの?」

「な、なにって……他愛のない日常会話だよ」

 普段通りの話し方。しかし、和人の目にはどこか動揺の色が浮かんでいる。

「ふうん。わたしにはそうは見えなかったけど」

「なんだよ、なにか疑ってるのか?」

「べ・つ・に? まさか文化祭をサボろうだなんて、幾らのんびり屋なキリト君でも考えないだろうしー」

「はは、なるほどな。……まあ、そんなとこ。アスナの予想と大体合ってるよ」

「……はあ!? ち、ちょっと、おサボりは許しませんからね!」

 既に彼の姿のなくなった舞台袖に、明日奈の声が虚しく響いた。




 なんとか和人を連れ戻す──否、引き戻すことに成功したあたし、リズベットこと篠崎里香の出番は、このグループ内では1番。つまりトップバッターというわけだ。
 と言っても、ソロではなく、中等部生であるシリカこと珪子とのデュエットである。しかし緊張することに変わりはなく、あたしは先ほどまでとほほと肩を落としていた──和人に叱責する事で、気合いを入れ直すそれまでは。

「トップバッター緊張するけど……頑張ろうね、珪子」

「はい、里香さん!」

 あたしは珪子とハイタッチした。明日奈が和人の両肩をぽんと叩き、言う。

「ほーら。キリトくんは一応リーダー格みたいなものなんだから、しっかり気合い入れてかないとダメだよ」

「は、はいアスナさん……ええと、み、みんな! 今日まで頑張ってきてくれてありがとう。成功するかどうかなんて考えなくていい。精一杯楽しんで、最高の文化祭にしようぜ!」

「「「おー!!」」」

 静かな舞台袖に、あたし達の声がこだました。



 明日奈の礼儀正しい手短な挨拶が終わり、
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