暁 〜小説投稿サイト〜
Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
序章
04話 邂逅
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「………」

 見覚えのある天井だ―――不意に意識が戻った自分はそんな間の抜けた事を考えていた。ぴっぴっぴと心電計の規則的な電子音が耳に付く。

 体が鉛のように重い…右目も開かない。
 体を起こそうと寝かされていた寝具に手を着こうとするが、何時まで経ってもその感触は来ない………ああ、右腕が無いのだ。

 徐々にはっきりしてゆく視線を落とす、右足も無い。
 どうやら右半身を損なっているようだ。右半身の臓器は複数あるため一時的な切除は大丈夫だったり、損傷してもなんとかなる臓器が多い、そのためだろう。

 ―――それでもよく生きているものだなと感心するが。

 だが、漸くふと気づく……自分の残った左腕が誰かの腕を握りしめていた事に。
 自分が寝かされていた寝具の隣に若干低めに高さを調整された寝具に一人の少女が横たわっていた。

 彼女は静かな寝息を立てつつ、自分の残った左手を握っていた。


「……―――」

 少女は純白のシーツに身を包んでいるが、その身を纏う衣服はない。
 肩口をやや超える辺りまで伸ばした黒髪を寝具の白いシーツに落とす少女……幼さが前面に立つが目鼻の輪郭からもう数年ぐらい齢を重ねれば誰もが振り向く美人となるだろう。

 尤も、今の状態でも随分と可愛らしいが。

 そんな少女の穏やかな寝顔、それを目を細めて眺める。
 この年端も往かぬ少女が何故、自分の横で眠っているかは分からない。自分が何故、彼女の腕を握っているのかも。
 パッと見、外傷があるようにも見えない。単に気絶しただけならこんな重体の人間の横に寝ているはずもない。

 答えのない疑問、それ自体はどこか気味が悪い。
 しかし、自分の残った左掌を握り返す少女の寝顔は心に無聊の穏やかさを運んでくれる。


「父様……」

 少女が寝言を口にした。
 弱々しく、まるで迷子が親を求めるように―――そして握り返す手に力が籠められ、その閉じられた眸から一滴の涙滴が零れ落ちた。


「うぅ……違うんだ―――私は…私は」


 悪夢に魘されているのか、苦し気かつ悲しげに声色と顔色が歪む。
 ああ、こういうのを見ていると腹が立つ。
 こういう少女は笑っている時こそが一番だというのに、このような悲哀の表情を取られては苛立つ以外どうしようもない。

 ―――もう一方の腕が残って居たのなら、彼女の涙を拭ってやれるのに。
 そんな歯痒さも同時に沸き立つ。


「起きろ!おい起きろ!!」

 肘から先の無い腕で少女の肩を揺する。
 悪夢の中よりは、目が覚ます方がマシだろう―――夢は所詮夢、覚めれば泡沫に消えゆるものだ。

 だが……もしかしたら、この現実の方が悪夢よりも尚救いが無いのかもしれない。
 其れ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ