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つがいの名前
第二章
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第二章

「それかのう」
 そうも思うのだった。その間も彼女達の言葉は続く。
 そしてそのまま彼の前を通り過ぎていった。その日はそれで終わりであった。
 彼はシロを連れて家に帰った。娘は家に帰って来た彼を見てすぐに言ってきた。
「どうしたの?」
「どうしたのとは?」
「顔色が凄くいいけれど」
 このことを言ってきたのである。
「凄く。どうしたの?」
「いや、何もないがのう」
 それでも彼の顔は今はにこにことしていた。自分でも少しは気付いていた。
「別にな」
「そう。だったらいいけれど」
「それでじゃ」
「ええ。お疲れ様」
「お茶は自分で淹れるぞ」
 こう言って台所に向かおうとする。しかしその前に娘の方から言ってきたのであった。
「もう淹れてるわよ」
「何と」
「冷めてるけれどいいわよね」
 そしてこうも言ってきたのだった。
「別に」
「そうだったのか」
「さっき飲んだのよ」
「それであるのか」
「そうよ。それでもいいかしら」
「ああ、それでいい」
 構わないと返した力也だった。
「お茶があるのならな」
「わかったわ。じゃあそれでね」
「うん。それにしても」
 ここでさらに言う彼だった。しみじみとした声で。
「あれだな」
「あれって?」
「いや、中々面白い娘に会ったよ」
「面白い娘って?」
「可愛いっていうのかな」
 あの道で見た真ん中の女の子のことを言うのである。
「アイドルかな、あれは」
「そういえばお父さん山口百恵のファンだったわね」
「ああ、懐かしいな」
 その時のことを思い出して目を細めさせもする。まんざらではない様子である。
「奇麗に引退したな、本当に」
「そうよね。他に河合奈保子も好きだったわね」
「松田聖子も中森明菜もな」
 意外とそうした女の子に詳しい彼だった。それもかなりである。
「他には早見優も好きよね」
「今もな。皆好きじゃよ」
「高橋由美子とか深田恭子もよね」
「いいのう」
 守備範囲はかなり広いようである。それが窺える今の言葉だった。
「今じゃ誰なの?」
「モーニング娘。もいいし松浦亜弥も好きじゃな」
「成程」
「AKB48もいい」
 目を細めさせた言葉だ。とにかくアイドルが好きなようである。
「そうそう、今はやっぱり北乃きいが一番じゃな」
「そのきいちゃんにそっくりだったの?」
「また違う」
 あの娘は確かに別のタイプだった。そのことを今思い出すのだった。
「じゃが可愛かった」
「そんなに可愛かったの」
 お茶を持って来ながらさらに問う娘だった。そのことをだ。
「その娘って」
「うむ。本当に何処かの事務所に所属していてもおかしくはない」
「ふうん、そんなに」
「さて、明日も会えるかな」
 お茶
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