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不可能男の兄
第二章
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略式相続確認で三河君主の嫡女と認知された自動人形、ホライゾン・アリアダストは己の役目として引責自害を了承。
自害は妨害を避ける為に三河当地において、即日行われる。
予定時刻は本日午後六時。
それが、ホライゾン・アリアダストの自害《余命》の時間である。



黒髪を揺らして足早に歩く少女がいる。
黒と白の制服姿。浅間という名札を付けた少女だ。
彼女が急ぎ向かっているのは、己のクラスである。
武蔵アリアダスト教導院の前側棟二階に彼女のクラスはある。
……朝に武蔵内の非常態勢が解かれましたが、どうしたものでしょうね。
三河消失後、浅間の家である浅間神社は、三河に存在した三河神社の権限を代行する確認や、警護隊からの要請で、流体の不協和による怪異に備える必要があり、跡取り娘である浅間も駆り出されていたのだ。
実際、大きな仕事はなくて雑務ばかりでしたね。それに、ホライゾンの自害と武蔵の移譲が決まってしまった以上、武蔵の中に大きな動きはありませんでした。
武蔵は三河の君主、元信公の所有物。
その君主が三河をボンッして消失させた。
武蔵は武装がない。あるものは、防御のみで攻撃への転用は難しい。
……三河君主が三河と共にボンッして、その責任は誰だー? ってところに、娘であるホライゾンが出てきて私だー! 私が自害するから許して! って感じですかね……。
それに、K.P.A.Italiaと三征西班牙(トレス・エスパニア)が武蔵を見張っている状態じゃあ動けないですね。どんな無理ゲーですか。
ダメ押しで、三河消失の映像が流されたので、どうしよもない。
皆、これじゃ、仕方ないって感じですよね。
皆というのは、武蔵全体の人々のことだ。
クラスメイト、トーリ君やユーキ君はどうするつもりでしょうね。
教室で待っていれば、わかるだろうか。
時間は八時よりかなり前。たぶん、一番乗りだろうと思う。

「――さてと」

戸を開けた。

「トーリ君? とその他大勢!?」
「その他大勢って。葵君は番屋で説教食らってそのまま帰らなかったっぽいよ。僕達は先に帰されたんだけど。ユーキ君はまた居所不明、つまりは行方不明だね」

ネシンバラが、表示枠《サインフレーム》の操作や指示を送るのを止め、こちらを見た。
メガネの向こうは、明らかに寝不足であったが、しかし力を失っていない瞳がこちらを見ている。

「ようこそ、権限を奪われた生徒会と総長連合の場へ。――酒井学長が関所で聴取を受けて足止めだけど、戻ってくるまでに皆で色々と決めておこうよ。――ホライゾン・アリアダストと武蔵に対してこれから僕達がどうしたいのかを」



まだ低い東の陽光が教室の中にいる生徒たちを横から照らす。
教室の机はほとんど埋まっていた。
彼等は、
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