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夫婦茶碗
第四章
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ってはこのことも驚きだった。
「やっぱりあれだろうな」
「あれって?」
「二人で一緒に食ってるからだな」
 夫は明るい顔でこう述べた。
「だからだな。それでだよ」
「それでだからなの」
「あの時だってそうだっただろ?」
 そしてその明るい顔で話す。
「ほら、御前が最初に出産して家に帰って来た時」
「えっ・・・・・・」
 この言葉を聞いて絶句してしまった。丁度さっき今手に持っている夫婦茶碗を持ってそのことを思い出していたからだ。それを夫からも言ってきたからだ。
「あの時こっちで料理作って」
「ええ」
「赤飯も炊いたな。あの赤飯がまたな」
「そうね。美味しかったわね」
 妻は自然と笑顔になって述べた。
「とてもね」
「あの赤飯は美味かった」
 彼は言った。
「とてもな。あんなに美味いものはなかったよ」
「ええ。けれど今日の御飯も」
「美味いよな」
「そうね。負けない位にね」
 また二人で言うのだった。妻はそのうえであらためて気付いた。
「そうね。二人で食べると美味しいわ」
「そうだよな。本当にな」
「特にこのお茶碗で食べたら」
 そうしてその夫婦茶碗を見た。まずは自分のものを。それから夫が手に持っているものを。それぞれ見たのだった。その自分の目で。

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