§61 無能力者ですか? はい、一般人です
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封印された上に逃げられた」
「それでれーとさん「負け」って言ってたのね」
相手は瀕死まで追い込んだが復活は時間の問題だ。一方こちらは相手に比べれば余裕こそある物の、権能が復活できる可能性は低い。
「試合に勝って勝負に負けたってやつ」
「ビミョーに違う気がする。……でもそしたら困ったね。どうやって帰ろうか」
案外冷静な恵那に内心驚く。もう少し取り乱すかと思いきや「使えないならしょうがない」などと割り切るとは。まだ完全に割り切れていない黎斗とは大違いだ。もちろん実感が無いから、というのもあるのだろうが黎斗の頭に須佐之男命の姿が幻視される。「宵越しの銭は持たねぇ主義だ」とのたまった彼の姿が、彼女を通して再現された。
「……ホント、スサノオの娘だよ恵那は。血は争えないな」
「おじいちゃまがどうしたの?」
「なんでもない」
「変なの」
「……主よ、意外に余裕だな」
半ば呆れの混じるジュワユーズの声に現状を思い出し。どうしようと考え始めれば周囲に響くのはヘリの音。こちらへ近づいてくる。
「何?」
敵ではないと思うのだが油断は出来ない。今の状態では人間相手に不覚を取ることも考えられるのだから。
「お久しぶりです、王よ。いつぞやは馬鹿……失礼、我らの王が”とても”ご迷惑をおかけしました」
「あ、その、どういたしまして……?」
「れーとさん意味わかんないんだけど」
ヘリから軽やかに飛び降りてきた男が頭を下げた。”王の執事”の予期せぬ襲来にしどろもどろになる黎斗。恵那がジト目でこちらを見てくる。
「やっほー、黎斗元気にしてた?」
ヘリの上から軽快なノリで声をかけてくるのは剣の王その人だ。それを見て察する。どういう事情かよくわからないがなんとかなったらしい。ドニは寝込みを襲ったりはしないだろう。それを思った瞬間、睡魔が再び鎌首を上げる。
「ごめん限界、落ちるわ。恵那、ジュワユーズ。何かあったら起こして。任せる」
それだけ言って、黎斗の意識は落ちていく。現世に復帰してから初めての醜態だった。
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