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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十五日:『虚空、虚数』
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嘲笑を聞いた気がした。

蛆の湧いた糞魔本(デ・ウェルミス・ミステリィス)の時といい、相変わらず悪運だけは良いよね、お前。お得意の『アイキドー』とやらを使ってりゃ、その忌々しい右腕ごと挽き肉(ミンチ)にしてやったってのにさ!」

 軽いフットワークを刻みつつ、『セラ』と名乗った娘は二挺拳銃の弾倉(マガジン)排出(イジェクト)する。
 襤褸の黄衣の下、腰から下がるガンベルトに装備されている弾倉を一度に装填、再び二挺の銃口が此方を向く。

飢える(イア)飢える(イア)風の皇太子(ハスター)…………」

 風が、渦を巻く。彼女の二挺拳銃を包み込むように、螺旋を描いた空気の流れが────形を為す!

抉れ(アイ)抉れ(アイ)────『風王の爪牙(ハストゥール)』!」

 静かに、音も無く。目に見えない風の流れが爪牙となる。成る程、魔術(マジック)の種は簡単だ。
 『風』による銃弾の誘導(ガイド)貫通付加(ペネトレート)、加えて肉体への攻防付加(リアクティブアーマー)速力強化(ヘイスト)。遠近両面、メンタルもフィジカルも完全に向こうが上。八方塞がりとはこの事か。

「さぁ────いくよ、『風に乗りて歩むもの(イタクァ=ザ・ウェンディゴ)』!」

 瞬間、アスファルトを踏み砕き雨水を撒き散らしてセラが吶喊する。『風』を踏み、目にも止まらぬ『風速』で軌道を変えながら。
 黄金色に燃える二つの瞳が、軌跡に煌めく残光を。イヌイット族に畏れられる、『姿なき人攫いの怪物』の名を叫びながら。

「伯父貴が出るまでもない……ボクらだけで、十分!」

 繰り出される室内格闘術(CQB)、近距離に徹した打撃が繰返し繰返し。触れる事も敵わぬソレ、故に大きな回避動作で。無駄に体力を削りながら。

──受ける事も出来ねェ、かといって潰す事も。ジリ貧か……全く、厄介、この上ねェ! 

 このままではいずれ、体力が尽きて殺される。ならば、やはり出来る事は────一つ。

「────ッ!」

 脚を踏み締め、『錬金術』を発露する。久々だが、やはり『()()』に使用する魔術は致命的な程の損耗。魔力の精製に死滅する肉体、それを最低限まで抑え込む事の可能な『確率使い(エンカウンター)』、『正体非在(ザーバウォッカ)』とも『制空権域(アトモスフィア)』とも呼ばれた、この能力(スキル)がなければ。
 作り出したのは、楯。足元のアスファルトとショゴスの一部を融合させた、壁を。それを楯に、一目散に────駅前へ。

『てけり・り。てけり・り!』
「邪魔だなァ……兄貴!」
『任せろ』

 ショゴスの特性により、獲物に向けて自在に伸縮する『楯』。
 その蠢きに、面倒そう
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