群雄割拠の章
第四話 「そこで相談じゃ……わしらはどうするべきか」
[1/12]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
―― 一刀 side 漢中 ――
盾二がいなくなって、すでに二月になろうとしていた。
漢中はいつもと変わらないように見えて、徐々に盾二がいなくなった事による弊害が見え始めていた。
大きなこととして……漢中に来る商人が減った。
これは盾二がいなくなったことに加え、漢の各地で不穏な動きが蠢きだしたことによる。
皆乱世が来たことを敏感に察しているようだ。
それでも、漢全土において最も安全な場所であるという評判は未だに高い。
減った商人のほとんどが洛陽や宛などを本拠とする北の商人達だから、盾二がいなくなったのが原因とは一概にいえないかもしれない。
しかし、問題は南の商人からの陳情だ。
三州同盟が解消されることを何処かで知った商人が、それを孔明ちゃんに訴えたらしい。
商人のネットワークは、利に聡く敏感だ。
南の巴郡や東の白帝城あたりからの商人は、商品の輸送に保証がほしいと訴えてきた。
元々、商人の商品に保証を与えるなど、どこの太守や州牧もやったことなどない。
そもそも、そんなことなど漢中以外で言ったら馬鹿にされるレベルだ。
この時代の商人の流通は、博打性の高いものだ。
その道中で山賊や江賊など、道中で命や荷を狙われることなど日常茶飯事なのだから。
けど、梁州では信じられないことに街道筋がとんでもなく安全だった。
その為、護衛を雇わないでも安全に荷が運べる。
それはつまり流通コストが著しく下がるということ。
当然、それは商品単価に反映され、価格競争により低価格で販売される。
物価が安く、しかも安定されれば物が市場にあふれる。
それは、二次加工、三次加工を容易にする。
それが莫大な利益となって、梁州を潤していたのだから。
でも、その保証が崩れればどうなるか。
物価は上昇し、賃金は抑えられ、流通が滞れば経済が止まる。
それは俺や盾二がいた世界でこそ顕著な反応を見せる。
いわく――インフレ、大恐慌、経済崩壊。
それらの起こる、初期症状はいつも同じ。
社会不安による買い渋り、売り渋りだ。
その徴候が、すでに漢中で起こり始めている。
俺ですら最近の風潮に気付き始めているんだ。
あの諸葛亮孔明や鳳統士元が気づかないわけはない。
そう、気づかないわけがないんだ。
だから、何らかの対策をしている……はずなんだけど。
とはいえ、俺がやきもきしてもしょうがない。
あの天下の諸葛孔明に?統……じゃなく、鳳士元がいるんだ。
そもそも門外漢の俺がでしゃばるべきではないのかもしれない。
こんなとき、盾二がいれば……そう思ってしまう。
あいつは俺とは比べ物にならないく
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ