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少女1人>リリカルマジカル
第十三話 幼児期L
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 その声は、プレシアに伝えているようで、どこか独白のようなものでもあった。俯いた顔からは表情はうかがえない。淡々とした小さな声音、だがどこか思いが籠っているようだった。

「難しく考えすぎなんだよ、俺は。いいじゃん、譲れないんだから。だったら、受け入れてやる。だけど、……全部受け入れてやる必要なんてないんだ」

 1つ1つ言葉にしながら、アルヴィンは受け入れる。だが言葉通り、ただ全てを受け入れてやる気はさらさらなかった。傲慢な考えかもしれない。アルヴィン自身成功するのかなんてまったくわからない。見通しだってすごくあやふやだ。

「それでも、仕方なくなんてない。割り切ってもやんない。俺はそんな未来はいやだ。だったら、立ち向かうしかないじゃないか」

 だんだんはっきりとした声へと変わっていく。それと同時に俯いていた顔が上がっていき、目には一切の迷いはなくなった。ずっと原作から目を逸らし続けていた、関わらないと決めていた。

 それを、やめた。


「あのさ、母さん」
「ん?」

 プレシアには、アルヴィンが何を決意したのかはわからない。何に悩んでいたのかも聴けなかった。それでも、彼女はこれでよかったのだろうと思えた。真っ直ぐにプレシアを見据える黒い瞳は、強い意志を宿していたから。いつも通りの笑顔が戻っていたから。

「俺なりに、頑張ってみようと思うんだ」
「……頑張れるの?」
「うん。出来ることは少ないかもしれない。結局何も変わらないのかもしれない」

 少年の憧れたヒーローみたいにかっこよくは出来なくても、我武者羅で泥まみれのヒーローもどきになってみるぐらいなら出来るかもしれない。

「それでも頑張るだけの価値は、絶対にあるはずだから」



 あの後、さすがにずっと抱きついたままは恥ずかしがったアルヴィンが、プレシアに顔を赤くしながらも離してもらった。プレシアは、さっきまでのアルヴィンの言葉を深く聞くことはしなかった。頑張りたいと、そう告げた息子に水を差すつもりはない。

 それでも、母親として見守ることはできる。

「1人じゃダメな時や、疲れてしまったら、お母さんやアリシアのところにいつでも戻ってきなさい。ここはあなたの居場所なんだから、いいわね?」

 プレシアは、小さく何度もうなずく少年の頭を優しく撫で続けた。「ありがとう、母さん」と囁くように伝える声が、夜風に響いた。


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