第15話 嫌いな奴
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宇宙歴七八四年一一月 統合作戦本部 査閲部 統計課
俺が統計課に配属になってから三ヶ月が過ぎた。
フィッシャー中佐の告白以降、俺は中佐だけでなく暇を持て余しているマクニール少佐や、他のかなり年配でそろそろ退役かという位の査閲官や事務の人と積極的に話すようになった。若い(といっても四〇代なんだが)査閲官は仕事をバリバリこなしているので、声をかけづらいというのもあるが、老勇者達は話しかけてくる俺に、快くいろいろな経験談や自慢のコツを教えてくれる。
「砲撃、ってのはだ、坊。こういっちゃ悪いが、画面を見て引き金を引ける奴なら、それこそジュニアスクールのガキだって出来る仕事なんだ」
特にその中でも最もよく話すマクニール少佐は、少しでも酒が入ると自慢の理論を話し始める。
「だが、名砲手ってのはそうそういねぇ。俺の顔見知りにアレクサンドル=ビュコックってのがいるが、コイツはまた凄かった」
フィッシャー中佐は既に帰宅の途につき、俺は少佐に連れられて下級士官用のバーに絶賛連れ込まれ中なのだが、その席で原作における超大物の名前が酔っぱらった少佐の口から出てきたのにはさすがに驚き、俺は飲み慣れないウィスキーを吹き出した。
「おいおい、坊主、大丈夫か?」
「なんとか……で、そのビュコック……さんは、どう凄かったんですか?」
「とにかく度胸が良くて正確な砲撃ができる。本人は運がいいからだと謙遜していたが、一瞬しか映らない敵の先制砲火を、砲手画面で瞬時に確認してから応撃するんだ。これはそうそう出来る事じゃない」
その身振り手振りがいちいち珍妙なマクニール少佐だったが、赤ら顔でも目は真剣だった。
「速く正確に射撃をする。これは俺達査閲官の評価項目のなかでも特に重要だ。だがな、敵より先に砲撃するというのは、場合によってはあんまり良いことじゃない」
「敵に自分の位置を先に知らせることになる、からですか?」
「そうだ!! よく分かったな坊主。さすが首席卒は頭の回転が違う」
そういうとマクニール少佐は俺の酔った頭を、長年の砲撃指導で少し曲がった指でゴリゴリとひっかいた。もっとも俺の返事は原作にあった、ヤン艦隊の熟練兵・教官の叱咤をそのまま口に出しただけなのだが、その事はあえて言うまい。
原作の知識があるというのは、確かにこういったところで役には立つ。だが結局、マフィアとかダゴンの英雄の場面を別として、宇宙歴七八四年現在からエル・ファシルの戦いのある七八八年までの五年間は、歴史上の出来事など殆どわからない。正直、金髪が赤毛と仲良くなっただの、孺子の姉が後宮に連れて行かれただの帝国側のこの時期における原作知識はあんまり役に立たない。
それよりも肝心なときまでに出世できているか、実権をにぎっているか、そちらの方が
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