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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十一話 苗川攻防戦 其の三
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捨てても逃げ切れません。」

「――ふむ。」
 ――正直、ここで幸運に頼るのも趣味じゃない。

「撤収作業中にそのまま強襲されたら全滅します。」
新城も反対となると答えは一つか。
「そうだな、やはりやめよう」

「夜陰に乗じて撤退。導術兵で警戒、単純ですがこれが確実でしょう」

「今更博打を打つ意味は無いか。それで行こう」
苦笑が浮かんだ。
 ――あの夜襲以来博打の連続で感覚がおかしくなっていたようだ。
部隊の現状と行軍予定、負傷者の数の把握、撤退の準備、その他諸々。
仕事はまだまだある。
だが、それは兵を死地からほんの一時とはいえ舞い戻す為の仕事だ。

「――やはり。」
今更な実感が湧いてきた。
「何だ?」

「やはり良い知らせだな。 やっと実感が湧いてきた」

「本当に今更だな」
豊久の旧友は普段の印象を変える朗らかな笑みを浮かべた


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