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ゾンビの世界は意外に余裕だった
17話、丘陵の手前で(前編)
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というかキャリー達に自由反撃を許可したら虐殺になりそうだ。

「気づかない振りをしろ」

 俺は相手の出方を窺うと決めた。アンドロイド達には出来れば敵の被害も抑えるよう命じる。


 それから十分ほど待つと、ようやく三台の車が丘を下ってきた。 別荘組に話し合う気があることを知り、俺は正直安心した。

 接近してきた相手はワゴン一台、民間仕様の四輪駆動高機動車一台、乗用車一台。

 別荘組の車列は俺達から三十メートルの位置に一度止まった。道からはみ出るように二台の車を並ばせてトライアングルを作っている。

 少しばかり緊張するがこっちはまだ何も武器を構えていない。

 ヘルメットと防弾チョッキに迷彩服を着た、いかにも異国の軍人という風情のマイルズが、白旗を掲げながら特使としてゆっくりと向こうに歩いていく。

 直後、相手の乗用車とワゴンの全てのドアが同時に開き、そこから武器を持った人間が出てくる。

 その数八人。車から降りてきた人達はドアを盾に拳銃とショットガンの銃口をこちらに向けた。

 一方、こっちはまだ友好姿勢を維持して武器を向けていない。相当緊張する場面だ。

「止まれ。それ以上近づくな」

 マイルズは相手の指示に従って別荘組の車から十メートルの位置で止まった。すると、二台の車の後ろの高機動車のドアが開き、運転席と助手席に居た二人がライフルを持って車を降りた。

 前の車と同じようにドアを盾にする。そして最後に後部座席から降りた二人がこちらに歩いてきた。

「知った顔はいないようだな」
「はい」

 俺は誰かしら知った人間が来ると勝手に思っていた。そのため、さらに緊張する。

 戦闘態勢を取るように命じたくなるが、相手がこちらに近づいている以上、余計なことはしない。

 俺は深呼吸をしてからキャリーやレグロンを見る。特に警告を発していない。今のところは順調と信じよう。

「ご用件は?」

 別荘地の代表者は黒いスーツ姿で四十歳後半くらいの緊張しまくっている男と、GパンにTシャツ姿で二十歳前半位のショートカットの女性だ。

「研究所の斉藤が挨拶に来たと高橋さんに伝えてもらいたい」

 マイルズが用件を伝える。

「高橋さん? ひょっとして皆さんは高橋さんの知り合いですか」

 緊張しまくっていた男があからさまに安堵を示すと、その後ろで銃を構えている連中も、ホッとしたのか緊張が緩んだように見える。ただショートカットの女性は警戒心を解いていない。

「申し訳ありませんが、代表の高橋は外出中です。高橋本人の許可が出るまで、これ以上別荘に近づかせるわけにはいけません」

 ショートカットの女性が申し訳なさを全く感じない厳しい口調で告げた。

「高市さん、研究所の人達は以前食料を分けてくれて病人に薬をくれたんですよ」

 男が取りなそうとしているが、あの様子じ
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