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全てを賭けて
第四章
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「勿論怪しまれることはなしにな」
「ここまでは上手にいきましたね」
 イスタンプールまで入り込みそして商人に化けて街の中を彼等を探すことはというのだ。
「とりあえずは」
「そうだ、だがだ」
「問題はこれからですね」
「彼等の強さの秘密をどう探すかだ」
「それが大事ですね」
「そういうことだ、ではな」
 子爵はペルシャ商人の姿のまま鋭い目でその市民達から喝采さえ浴びているイエニチェリ達を見つつヒメネスにこうも言った。
「まずは彼等に近付くか」
「商人として、ですね」
「私はペルシャの商人だ」
「そして私はそのお供ですね」
「そういうことだ、それでだが」
 ここで子爵は再びイスタンプールの市井を見た、見ればだ。
 市井の者達は酒を飲んでいる者も多い、酒が普通に売られていてそれを楽しんでいる。子爵はその状況を見つつヒメルスに話した。
「この国はイスラムだがな」
「はい、それでもですね」
「酒を飲んでいるな」
「その辺り結構いい加減でしょうか」
「この国にいるのはサラセンだけではない」
 そのイエニチェリも元々はそうだがキリスト教徒も多い、見れば肌の色も黄色い者達だけでなく子爵達と同じ肌の色の者もいれば黒い肌の者達もいる。
「だからだろうな」
「酒を飲むこともですね」
「普通なのだろう、ではだ」
「それではですね」
「酒を使うか」
 ここは、というのだ。
「そうしてな」
「彼等から直接聞き出しますか」
「近付いて酒を勧めてな」
「それでいきますか」
「飲まないならだ」
 改宗しているがムスリムだ、確かにイスタンプールでは酒は普通だがやはりこのことは可能性として有り得た。
「他の飲みものに入れてな」
「そうしてですね」
「酒は少し入れてもな」
「効果がありますからね」
「神の血は我々を導いて下さる」
 即ちワインは、というのだ。
「それを使おう」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 子爵はヒメルスと共にペルシャの商人としてその喝采を浴びるイエニチェリ達のところに赴いた、そうしてだった。
 彼等にだ、トルコ語でこう声をかけた。
「あの、宜しいでしょうか」
「?御主トルコ人ではないな」
「目の色が違うな」
「はい、私共はペルシャから来た商人でございます」
 商人らしく腰の低い態度で話す。
「この度イスタンプールに商いで来たのですが」
「そうなのか」
「よく来たな」
「はい、それでいつも貴方達のお話は聞いています」
 子爵はここで彼等を言葉で持ち上げた。
「それでお近付きになりたいと思いまして」
「ふむ、それでか」
「それで我々に用があるのか」
「何か召し上がられませんか」
 共に食事をすることを願い出たのだった。
「宜しいでしょうか」

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