暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
雷の神の一撃を
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

『ねえクロ君、私がクロ君のどんなトコを好きか知ってる?』
『顔?』
『惜しいっ!顔も好きだけど1番は違うよ』

そう言って笑う、黒髪の恋人。
まだクロノの腕に、妖精の紋章があった頃。まだナギが、クロノの横で笑っていた頃。
ぎゅっとクロノの腕に抱き着いたナギは、上目遣いにクロノを見上げて呟いた。

『クロ君はさ、いつだって真っ直ぐでしょ』
『?』
『相手が依頼人だろうが敵だろうが、間違ってる事を間違ってるって絶対に言う。見て見ぬフリなんて、どうやっていいのか解らない。誰もが無視するような事にだって気づいて、間違ってたら皆に届くような大きな声で間違ってるって言うよね、クロ君は』
『……間違ってる中で生きてきたからな』

自分が生きてきたカトレーンの一族は、間違いだらけだった。
暫くは何も知らずに生きてきたクロノがまず知った間違いは、自分に対する周囲の目だった。愛人の子である、と言う事だけを理由に白い目で見られてきた。
次に知ったのは、当主であるシャロンへの態度。彼等はシャロンを恐れる一方で、その権力を自分の好きなように振るいたがった。だからこそ気にくわない奴を殺して、それを彼女の権力でなかった事にしていたのだろう、と気づいたのはもっと後の事である。
そして最後に知ったのは――――――異母兄弟である妹に対する態度だった。初めて妹にあった時、クロノはまず、その目に驚いた。自分と同じ色の目であるはずなのに、その目にはいつも疑いと嫌悪、敵対心が滲み出て濁っているようで、彼女の青い目は汚れも傷も1つとしてない水晶玉のように透き通っているように見えた。きっとそれは、カトレーンが今まで彼女にしてきた事の結果。その全てを知る者の目は、もう誰も信じられないと訴えているようだった。

『オレは間違ってる事を間違ってるって言えない環境で育った……その反動、だと思う』

間違ってると言っても怒られない。
正しい事を正しいと言える、そんな環境をクロノは知らなかった。カトレーンにいた頃も、心の中では叫んでいたのかもしれない。それは間違っている、と。
ただ、自分がそれから顔を背け続けていただけで。

『違うよ』

俯くクロノを、ナギの声が持ち上げた。
引っ張られるように顔を上げると、ナギはニコニコと笑っている。

『反動じゃなくて本能だよ。間違ってる事を見てるのに黙ってる事が出来ないのは、クロ君の中にある正義感の証でしょ?それは絶対何かの反動じゃない。確かにクロ君はそういう環境で育ったのかもしれないけど、環境が違ったとしても、クロ君はきっと悪い事を悪いって言う。それ以外の言い方なんて絶対にしない。ただ真っ直ぐに、悪いって言うよ』

言葉が足りなくてゴメンね、と困ったようにナギは笑う。
根拠も何もない、ティアが聞いたら真っ向か
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ