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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆奇跡
第四十七話 俺は誰だ
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と、シノンが手を伸ばして短剣を奪い返し、立ち上がった。
「商業区にプレイヤーがやってる武器屋があるわ。ここで考えこんでるより、そっちに行ったほうがいいんじゃない」


 店主リズベットはミドリを見るなりどうにも不思議な顔になった。
「はじめまして、よね」
「ああ、多分。ミドリだ、よろしく」
「あたしはリズベット。リズでいいわ」
 自己紹介は済んだものの、リズベットはまだミドリの顔をじろじろみていた。居心地が悪く、ミドリは思わず縮こまった。
「ああ、ごめんごめん。あんたが知り合いに似てたもんだから、つい。そいつ、死んじゃったんだけどね」
 リズベットは空気が暗くなりかけるのを感じて、ことさら明るい声で用件をきいた。
「武器を見たいんだ。とりあえずいろんな種類の武器と、それから防具を見せてくれないか」
「新しい武器を探すのね。あのクソ厄介なバグのせいでスキル熟練度が完全にリセットされちゃって以来、あんたみたいに新しい武器を探しに来る奴が増えたわ。あんだけ短剣にこだわってたマルバだって……って、ごめん。あんたはあいつじゃないんだった」
「ちょっと待って。その死んだ知り合いの話、聞かせてもらうわけにはいかないか」
 ミドリが食いついたのは、リズベットにとっては話したくない話題だったようだ。リズベットはあからさまに顔をしかめた。
「ごめん、あんまり話したくない。どうしてもっていうのなら話すけど……」
 ミドリは引き下がるべきかどうか悩んだが、結局頼み込むことにした。
「頼む。実は俺、記憶喪失になっちゃったみたいで……以前のことが思い出せないんだ。俺と似てる奴がいるのなら、何か思い出す手がかりになるかもしれない」
 リズベットは嫌そうな顔をしたが、しかし仕方がなさそうに頷いた。
「ちょっと信じがたいけど……そういう事情なら仕方ないわね。でもほんと、妙なところまで似てるものね。……そいつも記憶喪失だったのよ。それも、ただ忘れちゃっただけじゃなくて、記憶が短期間しか保たない病気なんだって言ってたわ。前向性健忘……っていうらしいけど」
 リズベットは隅に置かれたは椅子を三脚持ってくると、ミドリと、所在なさげにしていたシノンに座るように促した。遠慮しようとするシノンに対し、リズベットは言った。
「シノン、あんたも聞いていくといいわ。あんたもまだあいつのことを知らないはずだから」
「……その、あいつって誰なのよ。もったいぶってないで教えて欲しいんだけど」
「英雄よ」
 極めて簡潔な返事に、シノンは思わず黙り込んだ。リズベットはコーヒーを三杯入れて二人に配ると、自分も一口啜ってから、ゆっくりと話し始めた。

「あいつは……妙なやつだったわ。筋力パラメータが足りないからまともに攻撃を防げないくせに、いっつも身体半分を軽く覆うような大
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