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ロード・オブ・白御前
ユグドラシル編
第10話 Calling
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 自宅の自室。関口巴に許された小さなテリトリー。その部屋のベッドの上で、巴は膝を抱え、ある人に電話をかけた。

 コール音が2回。お目当ての相手はすぐ電話口に声を聞かせてくれた。

「もしもし。亮二さんですか」
《おう。トモか。どうした?》

 初瀬は巴のことをいつのまにか「トモ」と呼ぶようになっていた。ニックネームなど幼稚園以来で、嬉しくて特に訂正せず呼ばせている。

「ちょっと、ここ何日かたくさんのことがあって。親以外の人の声を聞きたくて」
《そうか――んじゃ、しょうがねえな》

 電話口から、どさっと何かに腰かける音がした。初瀬は腰を落ち着けて巴の話を聞いてくれるらしい。

「はい。……」

 言葉が続かなくなって巴は黙った。否、続けるべき言葉はある。だが話せば確実に初瀬亮二も当事者にしてしまう。

「……結構、重い話です。それでも続き、聞きたいですか?」
《バ〜カ。今さら俺がお前に他人面できるか。ほら、話したかったんだろ。吐けるだけ吐いちまえ》

 巴は知らず笑顔になり、飾ってあった白馬のぬいぐるみを抱き寄せた。

 巴は語った。ユグドラシル・コーポレーションの実態。角居裕也および呉島碧沙に加えられている倫理スレスレの研究。アーマードライダーもまたモルモットだったこと。全てが地球の存亡に関わることで、巴は手を出しあぐねていること。

《それ、ヘキサとは話したのか》
「いいえ……学校にいる間は、わたしと碧沙は話せませんから」

 碧沙は世界を背負うこととなった男女の片割れ。そうでなくとも、人気絶頂の碧沙と、巴の関係は秘されたものだ。
 さらには巴は碧沙から「関わらないで」と言われている。その言葉の通り、碧沙は学校では一切合切、巴に話しかけないし、目も合わせない。

《けどそれさ、結局問題から目逸らしてるだけだって、お前も分かってるんじゃないか?》
「っ、それ、は……はい。でも碧沙がそうしてほしいなら、そうする以外、わたしには何も……」
《できることはない?》
「はい――」
《そうか……苦しいな》

 巴は、はっとした。苦しい。そう、自分は苦しいのだ。碧沙に何もできないことが。碧沙を助け出してやれないことが。初瀬に指摘されて巴は初めて気づいた。

《けどさ。俺は、お前にできるのがそれだけ、とは思わないぜ》
「どうしてですか?」
《俺がそうだったから》

 巴は首を傾げる。自分は初瀬に何かしただろうか? 弱った彼に付け込んで、憂さ晴らしに連れ回したくらいしか記憶にない。初瀬はそんな巴の甘えを見抜き、汚れ役を買ってまで巴を帰してくれた。

《あの時、俺は力が欲しくて堪らなかった。そんなとこにお前が現れてさ、平和にゲーセン巡りさせられて。でもそれが、ささくれてた俺を、
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