暁 〜小説投稿サイト〜
ロード・オブ・白御前
ビートライダーズ編
第4話 錠前ディーラーとお嬢様
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 フルーツパーラー“ドルーパーズ”。その店の一番奥の個室席は、常に錠前ディーラー、シドが座っている。
 ビートライダーズ以外で彼に話しかける物好きはいない。なのでシドはのうのうと紅茶とドライフルーツを愉しみながら客を待つ。

(これで給料が高けりゃ言うこと無しなんだが)

 こつ。思考を遮る絶妙なタイミングで、個室席に人が入ってきた。シドはその人物を見て、にやりと笑った。





 ドルーパーズに入る前に、制服にシワがないか確認し、ガラス窓を鏡代わりに髪を整える。そして、胸に手を当てて深呼吸。そして、呉島碧沙は店に入った。

 一直線に彼がいる個室席へ歩いていく。

「よう、呉島のお嬢サマじゃねえか。この間はどーも」

 碧沙は両手で学生鞄を持ち、折り目正しく頭を下げた。

「いいえ。こちらこそ、先日はお世話になりました」

 よかった。噛まずに言えた。

「今日は相方はいないのかい?」
「巴は追試で遅れるそうです」
「そりゃ災難なこって」

 碧沙は小さく笑い、シドの正面のソファーに腰を下ろした。

 ――実は、シドとは知らない仲ではない。知り合ったのは中学に上がってすぐからだが、錠前ディーラーとビートライダーズの枠に収まらない知り合いなのは確かだ。
 何せユグドラシル・コーポレーションという、沢芽市ではこの上なく大きな枠組みの中での知り合いなのだから。

 ユグドラシルを抜きにしても、碧沙という少女はシドに関心を寄せていた。兄の部下でもある湊耀子には「趣味が悪い」と一刀両断されたが。

(こっちはアウトローに憧れるオトシゴロってやつなんですもん。シドさん、その筋の人にしてはイケメンだし、うさんくささが少ないし)

「今日のご注文は? ロックシードかい」
「はい。それと、ロックシードを嵌めるためのベルトを」

 す、とシドは目を細めた。兄の部下としてではない、商売人としての目。
 碧沙は竦み、それを悟られまいとアルカイック・スタイルで耐えた。

「その注文には応えかねる。戦極ドライバーはこれと見定めた奴にしか渡さないようにしてんだよ。お嬢サマにせよ相方にせよ、ふさわしいとは思えない」
「そう――ですよね」

 碧沙は顔を伏せた。

「何だ、アーマードライダーになりたいのか?」
「いえ。わたしじゃなく、巴が。他のチームのライダーを見るたびに、考え込んでるみたいでしたので」

 スマートホンの画面を観ていた巴を思う。
 焦がれるように。焦るように。鎧武を、龍玄を、バロンを。

 シドの視線に責める色が加わり始める。碧沙は慌てて笑みを繕った。

「ご心配なさらなくても、自分が()()だってことはちゃんと自覚しています」

 検体。有
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ