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静かな気持ち
第三章
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はイアンであった。彼は若い女の子のメイドを連れてやって来た。
「ケーキをお持ちしました」
「何ケーキだい?」
「苺と生クリームのケーキです」
 イアンはそう答える。
「如何でしょうか」
「もらおう」
 彼はそれに応えた。
「他にはあるか」
「チョコレートやタルトがございますが」
「それは皆が食べてくれ」
 この家では多くのケーキから一つを主が選び残ったものは使用人達で分けることになっている。食べ物を粗末にしないのはいいことである。同時にグリッジ家の度量と寛容を示しているとされている。少なくともジョゼフは欲張りではなくケーキは一つでよかった。それにケーキを捨てる位なら他の人間が食べるべきだと考えていた。どちらにしろ食べ物は大事にする男であった。
「いつも通りな」
「わかりました」
「しかし苺のケーキか」
 メイドがテーブルの上に置くそのケーキを見ながら述べた。


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