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貴方が其の名を呼んだ日から
貴方が其の名を呼んだ日から

[1]後書き
貴方が其の名を呼んだ日から

「セバスチャン___。」
幼き主。シエル・ファントムハイブの声が響いた。
「なんです?坊っちゃん。」
私はいつも通り返すだけ。
「何か甘いモノが食べたい。糖分不足で仕事が出来ん。」
ああ、やっぱり。
いつものことだ。坊っちゃんはいつも甘いモノが食べたいと言う。
偉そうにしていても結局はまだ子供なのだ。
そこが可愛いのだが……
「甘いモノの食べすぎはお身体によくありませんよ?」
私はあえてそう答える。
「うるさい。命令だ。セバスチャ___んッ」
貴方が其の眼帯に隠れ普段誰にも見せない紫の瞳を露わにする。
そして、貴方は私の名を呼ぶ。凛とした幼いか弱い声で。
その声が私の名を最後まで言うか言わないかの瞬間。私は主の小さな薔薇の花弁のような唇に口付けを落とした。
「なッ……??何をする……ッ!」
狼狽を隠しもしない主を愛おしく思う。
「糖分を与えて差し上げたのですよ。坊っちゃん。」
私は意地悪く微笑みながら言う。
耳までを羞恥で深紅に染める主をニヤニヤと見下ろした。
「セバスチャン___ふざけるのは大概にしろ。甘いモノをもってこいと言っているんだ」
目の端をピクピクと痙攣させながら言う主に答える。
「おや、坊っちゃん。先程のキスは甘くはありませんでしたか?
それとも___坊っちゃんはキスだけでは物足りなかったでしょうか……?」
嗚呼、私は何故……こんなにも幼い主に真剣になってしまうんでしょう……我が主は人間で私とは別のモノだというのに……
「ッ!セバスチャン___そういうコトは夜だ!」
頬を赤らめる貴方が私の名を呼ぶだけで私は理性を押さえつけることさえ難しくなってしまう。身体の奥底が音を立てち崩れ落ちるように……
「夜……ということは。私は夜のご褒美を期待しても宜しいのですね?」
「ッああ……だからさっさと甘いモノをもってくるんだ!」
主の承諾を受け私は夜が楽しみで仕方が無い。
「yes,mylord___御意、我が主」
私は主の言う通りに甘いモノ___キスでも特別な行為でも無く、スウィーツを作り始める。貴方がまた私の名を呼ぶように。いつまでも名を呼んでくださるように。
もしかしたら、契約なんてどうでもいいのかもしれない。きっと私はこの主を大切に思ってしまうのだから。

どうにも、私はこの幼き主に敵いそうには無い。
貴方が我が名を呼んだその日から私は貴方に夢中なのだから。
敵う筈が無い。

悪魔には存在しない筈の感情を植え付けさせた貴方をどうしましょうか…………お仕置きはまた、夜のお話しです。

[1]後書き


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