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パンデミック
第六十四話「適合者の覚悟」
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―――【レッドゾーン“エリア27” 旧市街・廃墟屋上】


廃墟の屋上で、スコーピオは一人足を投げ出して座っていた。
目線はどこを向いているか分からないが、耳だけは各地の戦闘音を聞いていた。

「……………………」

普段見せない虚ろな表情。
一言も発することもなく、戦闘に参加することもない。ただ周りの音を聞くだけ。



「あ………こんなところにいた」

「ん? あぁ、“アリエス”か。どうした?」



スコーピオに話しかけてきた一人の少女。
見かけこそ少女だが、彼女も人類に牙を剥く“適合者”の一人だ。

「ちょっと………怖くなっちゃって………」

言葉に反して、彼女の服は返り血でほとんど真っ赤に染まっていた。
相当な数の兵士を殺したのだろう。

「その格好を見ればお前の働きがよく伝わる。まぁ休憩しろ」

「うん…………」

アリエスはスコーピオの隣にちょこんと座る。



「よう、スコーピオ……と、アリエスもいたのか」

座っている2人の適合者に話しかけてきた人物も、また適合者だった。

「サジタリウスか……」

「悪いが俺はここで見学だ。“俺自身”は非力だからなぁ。あぁ、化けもん共には適当に命令しといた」


サジタリウスの適合能力は、自身が戦いに加わるような便利なものではない。
感染生物を手懐ける程度の能力でしかないが、戦場の撹乱には充分だった。

「で? お前らはここで何考えてたんだ?」

“何してたんだ”ではなく“何考えてたんだ”という質問。
お前ら、とは聞いたものの、実質的にはスコーピオ個人への質問だ。
お前らと言ったのは、アリエスを除け者にしないサジタリウスなりの気配りだろう。

「わたしは、怖くなってここに…………」

「なんだよ、まだこういう空気は慣れねぇか? で、お前は?」

「……………………この先の未来を」

「あぁ、お前はそういう奴だったな」

サジタリウスは穏やかな笑みを浮かべてスコーピオの表情を伺う。
ずっと無表情だが、サジタリウスにはスコーピオが笑っているようにも悲しんでいるようにも見えた。



「人類を残らず全て排除し、適合者のみの“コープスウイルスの脅威が無い世界”………それを実現する
ためには、古い自分の居場所を潰さなければならない。進化とは残酷だが正しい………」

「へぇ〜、お前は適合者になることを進化と言うわけか……俺から言わせれば人生最大の不運だね」

「わたしも、そんなにいいことだとは、思えないかな……」


「…………最初は俺も……ただの不幸だとしか思わなかった………だが、色んな場所を彷徨っている
うちに、気づいたんだ。俺の力も、ブランクの力も……この世界を悲
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