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アマガミという現実を楽しもう!
第17話:ただ自分を超えるために(2)
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している。それでげんなりした気持ちがため息となったり顔に浮かんだりすると、先程のようなやり取りが始まる。何とも心の温まる話ではないだろうか。
 先程から続いている話とは、輝日東高の女性の新人教師の仕事ぶりの事だ。まだまだ配属されたばかりで仕事に慣れていないのは分かるが、授業内容が準備不足丸分かりであることや自分に仕事を振りすぎて辛いということを俺に愚痴っていた訳である。もちろん俺は陰口が嫌いだが、こういう話を聞くようになったのも元は絢辻先輩にとっての心の地雷を踏んでしまった俺の行動に原因がある。

「……という話なの! もうあの無能教師、私の気も知らないで!」

 先輩が硬く握られた両手で自分の太股に叩きつけながら、強い口調で言い放った。どうやら先輩のボルテージは最高潮に達しているようであった。「ようだった」というのは、先輩の話を俺は半分以上は聞き流したために、根幹となる部分以外は頭に入っていなかったからである。その時の俺の思考回路は、本当になんたら寸前の状態だったのだ。

「……でね、遠野君。君はどう思う!」
「……は?」

 呆けていた中にいきなりのキラーパスを振られ、俺は戸惑った。話の根幹に関係ないよね、無茶ぶりもいいところだ、と心の底から思ったものだ。

「え……そうですね。新人にいきなり即戦力を求める風潮は今の日本では無くてですね、その……どちらかと言えば新人にとって今の期間は人材育成に当たるのではないのでしょうか。ですから、無能だと思うお気持ちは理解できますが、断言して貶めるのは酷と言えないでしょうか」
「でも、教師なのよ! 人の人生を左右するのよ」
「神様や天才でない限り、教師にだって新米の期間はあります。配属されて最初から全部出来るなんてことは無いと思いますが……」
「むう……」

 むっとした表情の先輩の口から唸り声が漏れて、俺に鋭い視線を浴びせる。これまでに幾らか浴びせられたが、やはり怖いからその射殺すような視線は止めてほしいと心から思う。

「遠野君って、大人みたいな口を聞くのね。まるで、教師みたい」
「き、教師ですか?」
「そうよ。常識人ぶって、自分の言っていることが正しい、と自論を一般論のように話す口調が特にね」

 絢辻先輩は、拗ねた口調でそう言い、海の方に顔を向けてぷっつり黙ってしまった。何と話しかけても、彼女は眉間に皺を寄せて拗ねたような表情をする以外に一切俺の言葉に反応しなかった。

(別に意地悪したつもりは無いんだけどな、何でだろ)

 俺も海の方に顔を向け、隣の拗ねた年上の子どもの気分を害さないように小さく溜め息をついた。
 気分を変えようと、練習上がりに買った缶ジュースを学生鞄から取り出して、栓を開けた。あんなに冷えていた中身は少し温くなっていて、美味しいとも不味
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