暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第二章 〜対連合軍〜
九十八 〜虎牢関〜
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

「それもあります。他にも……」
「止さぬか」
 私は、朱里の言葉を遮った。
「お前が必要でないなどと、いつ私が申した?」
「…………」
「いや、お前だけではない。閃嘩も、星も、禀も、風も、誰一人として欠かせぬ存在だ」
 偽りを申すつもりはない。
 その思いが通じたのか、朱里の表情から翳りが消えていく。
「私は決して全知全能ではない。寧ろ、欠点の方が多いぐらいだと思っている」
「そんな事は……」
「いや、ある。智ではお前達には敵わぬ。そして、武でもそうだ」
 反論しかける二人を制して、私は続けた。
「決して謙遜しているつもりはない。皆の上に立つ者として、出来る事をする。それは私の責務と思っている」
「…………」
「だが、全てを一人で抱え込めばどうなるか……」
 そう、私が嘗て辿った道。
 あの時は信念に従っていたが、今にして思えば過ちも多々あった。
 その為に、皆を巻き込む訳にはいかぬ。
「良いか。そのような事、二度と口にする事は許さぬ。そして、勝手に死ぬ事も許さぬ」
 頷く二人。
「うむ。至らぬところは互いに補えば良い。それを忘れるな」
「はい」
「はっ!」
 よし、迷いのない良い眼をしている。
 さて、洛陽に戻るとしよう。
 なすべき事は山積している。
 月は死なせぬ、そして私も死なぬ。
 改めて、そう心に誓った。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ