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神に反しても
第三章
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第三章

 そうしてその笑みでだ。彼はこう言うのだった。
「ですが違うのです」
「といいますと?」
「私は確かにその罪を行動には移していません」
「行動にはですか」
「しかし心ではです」
 そのだ。心ではだ。どうかというのだ。
「それを犯しているのです」
「御心においては」
「行動に移さずとも。心でそれを思っていればです」
「それで罪だというのですね」
「そうです。それで罪になるのです」
 悲しい顔になっていた。神父はその顔で話すのだった。
「ですから私は罪を犯しているのです」
「そうなのですか」
「私は罪深い者です」
 辛いだ。悔恨を今話すのだった。
「その私が神父でいるということはいけないことでしょう」
「まさか。神父様は」
「神父を辞めるべきなのでしょう」
 その悲しい顔での言葉だった。
「やはり」
「あの、そこまで御考えでしたら」
 シスターはだ。神父の今の心を察してだった。
 気遣う顔でだ。こう彼に言うのである。
「その罪をです」
「罪を?」
「その罪を為されてはどうでしょうか」
 これがシスターの神父への今の言葉だった。
「罪を犯されては」
「その罪をですか」
「はい、罪をです」
 また言うシスターだった。
「それをです」
「私に罪を行動に起こせと」
「神父様は既に罪を犯していると言われますね」
「はい」
 シスターのその言葉にだ。神父はこくりと頷いた。
 そしてそのうえでだ。彼はこう言うのだった。
「その通りです。私はです」
「では。最早罪を犯されているのですから」
「その罪を行動にですか」
「移されても問題はないのではないでしょうか」
 少なくとも神父が今のまま苦しむよりはと思いだ。シスターは話すのである。
 その彼を見ながらだ。シスターは気遣いながら言葉を述べていく。
「そう思いますが」
「罪を既に犯しているのなら」
「行動しても同じですから」
 また言うシスターだった。
「ですから」
「そしてなのですか」
「はい、そのうえで神父をです」
「辞めるべきだと」
「そこまで御考えなのでしたら」
 神父のその深い思いを知ってだ。そのうえでの言葉だった。
「私はもうです」
「貴方から仰ることはないですか」
「だからです。どうでしょうか」
「そうですね」
 考えてからだ。神父は答えた。
 主に正対してそのうえで俯いている。黄金の輝きを前から受けてはいるが顔をあげて受けてはいない。そしてそのうえでだ。彼は言うのであった。
「そうしてもまた」
「いいのですね」
「どうされますか?」
 あらためて問うシスターだった。
「そうされますか?」
「罪を犯しているのなら」
 神父は言った。
「私は既に罪を犯しているのなら」

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