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一人のカタナ使い
SAO編?―アインクラッド―
Prologue
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…ああ、お前も忘れんなよ時間」
「忘れないよ」

?忘れるわけないだろ。

「じゃっ、次会うのはSAOの中で、だな」

?そう言ってニヤッと笑った僕に対してコウも同じように笑った。

「……ああ!」

?コウの返答を聞いたあと、僕は左の部室棟に向かって一人で歩き出した。


◇◇◆


「くそっ、なんで今日に限って……!」

?思わず悪態をつきながら僕は自転車を立ち漕ぎする。

?金曜日から二日経ち、今日は日曜日。つまりSAOの正式サービス配信日だ。

?本当は正午ちょうどに終わるはずだった部活が何故か今日だけ三十分延長し、部活が終わったのは十二時三十分。そして今僕は全力で家に下校しているところだ。
?正式サービス配信の時刻は確か午後一時。多分家に着くぐらいの時間だろう。多分通常通り部活を終えたカイとコウは今そわそわしながら待っているはずだ。

「ただいま!」

?僕は家に着くなりすぐに階段を駆け上がり、二階の自分の部屋に向かう。
?勢いよく自室の部屋のドアを開けると目に飛び込んできたのは、ベッドの近くにある昨日父さんと相談しながら設定をした《ナーヴギア》。ソフトは既に入れてある。

?僕はふうっと息を吐いて呼吸を整える。ついでに背中に背負っているエナメルバッグから部活で使ったタオルでここまで来るときに出た汗を拭い取った。

?今の時間は午後一時十分。
?もうとっくに正式サービスは配信され、たくさんの人々がここじゃない別の世界へ旅立っているだろう。おそらくカイとコウも。

「待ってろよ……二人とも」

?僕は興奮でにやける口元を隠しもせずナーヴギアを頭に被り、ベッドに寝転がる。そして別の世界へ行くための鍵である言葉を口にした。



「――リンクスタート!」



?――だけど、僕がSAOを『ゲーム』としてプレイすることはこの時から一度たりともなかった。
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