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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
24.July・Afternoon:『Predator』T
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なったぞ────』

 だから、誰が呆れ返ろうとも関係はない。全ては、己の選択。ならば、後悔だけはしないように。
 『背後に佇む影』に還った、燃え盛る三つの眼差しに等は気付かずに、偃月刀を構えたままで。

「無茶を言わないでくださいまし。こんな厄介な相手を、貴方一人では荷が勝ちすぎると言うものですの────!」

 今度は、従う事なく。四本の金属矢を転移させた彼女。狙いは、古都の靴。

「『───飢える(イア)飢える(イア)……」』

 それを縫い止めて相手の意識を逸らし、身動きを封じて直接転移で地面に服ごと縫い付ける。彼女の得意パターンだ。

「待て────ヤバイんだよ、あの本は!」

 時速に直せば二九〇キロ。嚆矢の言葉は届く前に消える。
 果たして、靴は縫い付けられた。しかし──狂信の祝詞は、既に最高潮。

「『飢える(イア)飢える(イア)飢える(イア)────!」』

 揺れる。空間が、揺れた。水面のように、()()()()()()が。
 その刹那、まるで──否、正に押し出されて、黒子が路面に落下した。

「───────っ?!」

 俯せに押し倒されて息を吐き出し尽くした所為で声も出ず、恐怖に目を見開いて。思い出したように吸い込んだ空気に感じたのは、以前に理科の実験で嗅いだアンモニアなど、可愛く思えるほどの刺激臭。
 止せば良いのに、本能が言う事を聞かずに。振り向いてしまう。見るべきではない、悪夢すら生易しいと言うのに。

『Gruuuuuuuuu…………!』
「ひっ──────??!」

 粘膜に酷く刺激を与える、腐った荒々しい息を吐くもの。まともに見た彼女は、思わず涙を浮かべた。
 酷く不快な戯画化された狗にも見える、それは────

「『さぁ、お前への供物だ。貪り尽くせ────“ティンダロスの猟犬(ハウンド・オブ・ティンダロス)”!」』

 いまだ時間すらなかった『角度ある時間(ティンダロス)』に潜む、あらゆる命を敵視する邪悪な異次元の狩猟者(プレデター)────!
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