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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第五十一話 会議は進まず、されど謀略は踊る
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【第四部五将家の戦争】
皇都にて政治的闘争を繰り広げた五将家は、〈帝国〉軍がいよいよ内地東半分に雪崩れ込む大失態を切っ掛けとして
争点の解決は不可能であることか困難であるが一応の妥協を模索していた。
そこに付け込んだ衆民官僚の最大派閥である弓月家と馬堂家は西原家の事実を”噂”と言い換えほんのわずかな間とはいえ足並みをそろえることに成功した。
更に龍上国の天龍自治国では、〈皇国〉執政府との協定により、
避難民を受け入れたことから統領政会においても
〈帝国〉の統治政策と対天龍政策への不信感が高まっていた。
これを機とした前統領を輩出した坂東一家は〈皇国〉利益代表部への接触を図っている。
来る情勢に際し、私は父の意向を汲み、行動せねばならない。
――〈皇国〉外務省三等書記官 弓月葵の日誌より


皇紀五百六十八年 七月二十日 午前第六刻 皇都 西原家上屋敷  
西原家当主 西原信英


「いやはや西津も随分と気張ってくれたようだが、結局、敗けだな。
いくら兵を削ろうとも揚陸を許すのなら意味はあるまいよ」

 五将家が一角、西州公爵家の当主・西原信置は集成第三軍司令部――事実上は西州鎮台派遣兵団司令部である――よりもたらされた報告書を机の上に投げ出して呻いた。
対面に座る西州公子・信置も苦い顔を浮かべている。

「龍州は事実上陥落、弓月と馬堂が組んで動かしていた避難計画がどこまで実現できるかですな。
それにしても近衛が後衛に回るとは‥‥‥」

「――それは無事を祈るしかあるまいよ。こちらが口を挟めるほど余力があるとも思えん。
ここで第三軍を使い潰せば皇都が危うい、内地が落ちれば西領も持たんよ。
精々、衆兵の駒城の育預が<帝国>連中を引っ掻き回すことを祈ろう」

 信置はその言葉を聞き、笑みを浮かべた。
「駒城は育預に馬堂と前線で派手に映える面子が多いですな。護州が手を出さなかった分、将家としての武名は我ら西原と駒城で分け合うような形――あぁ近衛の指揮官は安東でしたか」 

「西津が予想外に暴れたからな。あやつ、老けたような事を言っておったが当分はこき使っても問題なさそうではないか。鎮台の軍務は奴に一任しても問題あるまいよ。
私も年だしそもそもからして戦争は好きではない、あぁそうした点では保胤も哀れよな。あれはあれで出来物であるが、前線向きではあるまいよ」と信英は喉を鳴らして笑う。

「私も前線は御免ですな」

「貴様は遊びだけではなく偶にはまともな仕事をせんか」
 信英が呆れたように溜息をつくが、放蕩息子は笑みを深めるだけであった。
「父上、これでも私なりに仕事はこなしておりますよ。今日の夜も外で茶飲み話をしにいきますからな」
 
 信英は天井を眺めながらわざとらしく嘆いた。
「やれ
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