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ジオン独立戦争記〜名もなき兵士たちの転戦記
1.エルネスト・ルツ中佐編
第1話:開戦前夜
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宇宙空間。
そこは生身の人間が生きて存在することを固く拒む冷え冷えとした空間。
その一方で、漆黒の闇に浮かぶ無数の星の海は人々を魅了してやまない。
宇宙世紀が始まって70余年を経過し、コロニーという人工の大地に
数多くの人々が定住する時代となってもそれは変わらない。

エルネスト・ルツは生まれも育ちもコロニーという宇宙移民2世であったが、
彼もまた星々の大海に憧憬を抱く一人であった。
今も彼の目の前には無数の星が流れていたが、残念ながらそれに心を
奪われている余裕はなかった。

『第2小隊は敵の背後に回り込め。第3小隊はアタマを押さえろ』

「了解」

ヘルメットの中に響く上司からの指示に短く返事をすると、レバーとペダルを
器用に操作して乗機である”MS-06C ザクU”を敵部隊の前方へと回り込むように
機動させる。
彼は、ジオン公国軍突撃機動軍に所属する中尉であり、モビルスーツの操縦者であり
3機のモビルスーツからなる小隊の隊長であった。
そして今は、サイド3宙域の外縁部で模擬戦闘訓練の真最中である。

『小隊長、敵を捕捉しました』

部下からの報告を待つまでもなく、彼自身が正面スクリーンに敵の姿を捉えていた。

「確認した。攻撃開始」

ルツの指示によって3つの銃口から一斉に弾丸が発射されていく。
マシンガンによる1斉射を終えると、ルツは乗機を移動させつつ敵機の様子を
観察する。

「命中・・・だな」

見れば敵MSにはペイント弾の跡がくっきりと残っていた。

『よーし、演習は終了だ。 全機帰還せよ』

了解、と上司からの通信に返信し、手元の計器で母艦への軌道を確認すると、
背中のスラスターをふかして母艦へと帰還するべく乗機を加速させた。
左右のスクリーンを見ると、彼の僚機が一定の間隔を保ってついてくる。
母艦への慣性軌道に乗ったことを確認すると、ルツはバイザーを開けた。
顔にへばりついていた汗が玉になり、循環によるわずかな空気の流れに乗って、
漂っていく。
ルツはコクピット内に備え付けてあったドリンクパックの中身を喉に流し込むと、
シートに体を預けて大きく息を吐いた。





1時間後・・・
特に何事もなく母艦であるムサイ級軽巡洋艦”コリオラン”にたどり着いたルツは、
ハッチを開けてコクピットから飛び出すと、格納庫の床に向かって漂っていく。

「お疲れ様でした、ルツ中尉!」

ルツが漂っていく先では、一人の若い整備士が彼に向かって手を振っていた。

「おう。被弾してねえから特に問題はないと思うけど、頼むわ」

整備士の隣にふわりと着地すると、ルツは彼の肩をポンと叩いた。

「了解です。 バッチリやっときます」

短い会話を
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