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雲は遠くて
17章 世田谷区たまがわ花火大会 (5)
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美菜(みな)美穂(みほ)に会ってみた。
将也は、美穂を見た、その一瞬(いっしゅん)で、美穂に、
一目惚れ(ひとめぼれ)をしたといった感じであった。
美穂もまた、一瞬(いっしゅん)で、
将也の、好意(こうい)の気持ちを感じとったようだった。

4月で20歳になった、2年生の、
谷村将也(たにむらしょうや)と、
12月で、23歳になる、OL(オフィス・レディ)の、
南野美穂(みなみのみほ)
このふたりも、よく似あう、浴衣姿(ゆかたすがた)であった。

将也と美穂のうしろを、歩いているのは、
水島麻衣(みずしままい)と、矢野拓海(やのたくみ)だった。

(たが)いの気持が、
よく(つう)じていて、たいへん(なか)がよい
(あかし)なのだろう、
なんと、仲睦(なかむつ)まじく、手をつないで、
歩いている、ふたりであった。
このカップルも、浴衣(ゆかた)だった。

水島麻衣(みずしままい)は、早瀬田(わせだ)の2年生、
12月が来れば、20歳だった。
矢野拓海(やのたくみ)は、理工学部の3年生、21歳。
ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の幹事長でもある。

そんな麻衣(まい)と、拓海(たくみ)が、
仲よくなった、きっかけは、
ふと、ふたりが、かわす、会話のたびに、
ふたりとも、
楽器では、ギターが好きで、ギターリストでは、
ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)が好きなこと、
美意識、音楽観が、よく、()ていることであった。

拓海は、出合ったころから、麻衣を、妹のように、
(いと)おしく、親しみを感じていたが、
幹事長などをしていることもあって、
自分から、特別な行動は、とりにくかったらしい。

麻衣(まい)のほうは、性格も明るく、
生まれつきの社交性があって、
拓海(たくみ)(ちか)づく、チャンスを、
なんとなく、いつも、(うかが)っていたようである。

そんな、いくつものカップルが、誕生している、
ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の、一行(いっこう)は、
雑談(ざつだん)したり、
わらったりしながら、40分ほど歩いた。

4時55分ころ。
有料協賛席(ゆうりょうきょうさんせき)に、到着した。
花火の打ち上げ地点から、200mくらいの、
二子玉川緑地運動場(ふたごたまがわりょくちうんどうじょう)
の中の、多摩川の水辺である。
(はな)やかな花火の祭典(さいてん)を待つ、
数多(かずおお)くの人で、あふれている。

二子玉川緑地運動場は、緑の芝生におおわれた、
世田谷(せたがや)区民の(いこ)いの広場だった。
サッカーや野球などの、
レクリエーション(娯楽・ごらく)にも、利用されている。


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