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乱世の確率事象改変
受け継がれた意地
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がいる。黒麒麟と同じく、私を打倒しようとしてた軍師が何も手を打っていないはずが無いもの」
「へぇ、その軍師の名前は?」
「田豊。私のモノにする子だから、しっかりと覚えておきなさい」
「……そう、か。了解」

 彼女の容姿を思い出して牽制を含めて伝えておくと、少し瞳に陰が差した。徐晃は田豊に何を思ったのか。
 聞いてみたいが今はいい。これからいくらでも時間はある。戦場に向かった時に隣に居させるのだから。
 これで要件は終わった。そろそろ仕事に取り掛かろう。

「では仕事に戻りなさい」
「はいよ。そんじゃ、またな」

 優しい笑みを浮かべて徐晃は立ち上がった。気安過ぎ。敬意というモノが欠片も感じられない。

「あ! これ渡すの忘れてた。はい、いつもお疲れさん」

 扉に手を掛けていた徐晃は戻ってきて、私の机に小さな袋を置いた。

「何? これ」
「店長と一緒に作ったお菓子」

 袋の口を開けて覗いてみる。幾つか小さな固形物が入っていた。
 一つだけ取り出して見ると……

「綺麗……」

 思わず口から言葉が漏れた。こんな綺麗な飴を作って来たのか。
 キラキラと光りを透過して輝く色は黄金。美しく切り取られたカタチはまるで宝石のよう。

「本来はべっこう飴って言うんだけど……店長は『琥珀飴』って呼び始めたな」

 琥珀飴。いい。そっちの方がこの美しさには似合っている。
 いや、それより徐晃に尋ねたい。

「どうしたの急に?」
「んー、なんとなく」

 嘘つき。
 こういうときは見え透いた嘘ばかりだ。どうせ私が仕事ばかりで休みが無いから、とかそう言った理由だろうに。それに加えて先程の事に対する謝罪の意味も込めてる。

――仕方ないから貰ってあげる。これがおいしかったら貸し借りは無し、それでいいわね?

「ふーん、そう。貰っておくわ。ありがとう」
「……くっ、どういたしまして。じゃあな」

 目を細めてお礼を言うと、私に看破されたのに気付いたのか悔しそうな顔をした。その程度読めないわけが無いでしょう?
 バタリ、と扉が閉まった。
 ため息が漏れる。こんな些細なやり取りが面白いなんて……そんなことは、断じて、無い。
 食べてしまうのが勿体ないと感じる美しさの琥珀飴を一つだけ口に入れてみた。

 優しく、甘く、穏やかな気分にさせてくれる……さっきまでの空間のような、そんな味だった。



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