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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
白い光の中で
ターン11 壊れた鉄砲水
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「ごめん、ごめんね、皆」
『………?』

 あれからどこをどう歩いたのかは、自分でもよく覚えてない。だけどふと気づいたら、海辺まで来ていた。何となく歩く気にならず、その場に腰を下ろす。砂が入ったら洗濯が大変になるだろうけど、そんなこと知ったことではない。誰も何も言わない。だけど、僕にはもうわかってる。僕のデッキは間違いなく、僕のために最大限に力を発揮してくれた。あの初手をきちんと使いこなしていれば、こんなことにはならなかったはずなのに。

「もうわかってるから、気を遣わなくてもいいよ。あのターンでの正解は、白夜龍1体をリリースして霧の王のアドバンス召喚………そうすればリリース封印能力でトランスターンはそもそも発動できないし、エルフェンの効果で霧の王を守備表示にしてもチャクチャルさんが守備表示のままだからバトルが成り立たない。そうすれば、少なくとも次の僕のターンを迎えることができた。………違う?」

 辺りには人どころか海鳥すらおらず、ひたすら波の音のみが聞こえてくる。霧の王はレベル7の最上級モンスターだが、色々と個性的な点もある。その1つが、召喚に必要なリリースを1体、またはなしで済ますことのできる妥協召喚能力と、場のあらゆるリリースを封印する能力だ。白夜龍1体をリリースすればその攻撃力はウォーターワールド込みで3500とまず戦闘破壊されない数値となり、しかも上級モンスターの展開すら許さない。結局のところ、あの初手5枚に無駄なカードなんてものは1枚もなかったのだ。

『だがそれは結果論だ。あの時点では、向こうの手札はわからなかった。白夜龍を残そうとする判断も、決して間違いではない』
「確かにね。だけど、僕が一番嫌なのはそこじゃないよ。僕はねチャクチャルさん、僕は別にそこまでデュエルが強いわけじゃないってのは自分が一番よくわかってるんだよ。そんな僕がここまでいろんな相手に勝ってこれたのは、皆が僕に力を貸してくれたから。それがわかってるはずなのにあの局面、僕は自分のデッキよりも自分の浅い考えを信じたんだ。いつの間にか、実力で勝って来たなんて勘違いしてた僕がどこかにいる。それが、許せないんだよ。ねえお願いチャクチャルさん、今の僕に話しかけないでよ。…………ごめん。わがままなのはわかってる。でも少しだけ、一人にさせて」

 まだ何か言い返そうとしていたようだが、結局何を言っても無駄だと悟ったらしいチャクチャルさんがその場を去っていくような気配がした。
 また一人に戻って深いため息をついた瞬間、入れ替わるようにして別の気配。

「………嫌味でも言いに来たの?」

 棘のある僕の言葉に軽く首を振って、砂の上で体育座りをする僕のすぐ横にすとん、と腰を下ろす銀色の鎧。ついさっき話題にあげた張本人、霧の王だ。別に実体化させた覚えはないけれど、
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