「ソードアート・オンライン 穹色の風」の感想

迷い猫
迷い猫
 
コメント
 ……来ちゃった(手を後ろで組みつつ、やや不安げに見上げ

 とまあ、冗談は置いておいて、どうも、迷い猫です。
 以前から読ませて頂いていた作品ですが、なんとなくタイミングが掴めずに感想を書いていませんでしたが、今日はついに書きに来てしまいました。

 まずはやはりなんと言っても緻密にして精緻な心情描写ですよね。 某所で何度も言っていますし、他にも色々な方が仰っているでしょうが、圧倒的文量の心理描写は他に類を見ないこの作品の特徴だと思っています。
 これだけ長く重く濃く書いているのにくどくなり過ぎないのは凄まじいバランス感覚で、やはり相当な時間をかけて作られたものなんだろうなと感心しました。
 加えて、主人公のめんどくさいことこの上ない卑屈で根暗で陰鬱な性格も目新しくていいですね。 以前、マサキくんのコンセプトを「王道主人公に対するアンチテーゼ」と仰っていましたが、それが非常に上手いこと機能していて驚かされます。 めんどくさい彼の背中を蹴り飛ばしてどやしつけたい気分になるのに何故か憎めない……それどころかそんなところが可愛く思えてしまうから不思議です。 もしかして:母性←おい

 私の中でマサキくんは非常に繊細で臆病なんだな、と言う印象です。 メインヒロインである彼を失ってしまって以降、他者との交流を絶っているのは、つまり「大切な誰かをもう失いたくないから」であり、その方法として「大切な誰かを作らない」ことにしたんだな、と。
 それでもマサキくんも人間である以上誰とも関わらないことなんてできず、その辺りが50層攻略戦のあの子たちに繋がってしまい、そしてまた、今度は更に強く深く他者との間に壁を作るようになってしまって……おま、なんでそこで人から逃げるよ⁉ ってツッコミを入れました。 マサキくんはヘタレ可愛い(確信

 それでもお人好しなのか、それとも流されてるだけなのか、あるいは打算なのか、他人と細々と交流を続けていたマサキくんの前に現れたのが、肉食系恋愛超特急のエミさんw
 もっとも、エミさんの場合、登場当初はそんな面白いキャラだったわけではなく、彼女も彼女でマサキくんとは別方向で臆病な女の子だったわけですが……。
 彼女の場合は「孤独であることが嫌」だから「常に誰かに色々と施しを与える」と言う行き過ぎた善性で、自己の生活すらをも顧みずにそんな行いを続けた結果が《モノクロームの天使》なんて二つ名なんだから皮肉ですよね。 確かに彼女の行いは天使のそれなんでしょうけど、所詮はただの自己満足だと本人も薄々はわかっていただろうに、それを決定的になってからの心の折れようは心臓が締め付けられる思いでした。 もしかして:母性←おい
 しかし、そこから立ち直ってからの肉食感が凄い。 巷では「正ヒロインw」とか「メインヒロイン(笑)」とか言われているエミさんですけど、マサキくんみたいな子には彼女くらいに押せ押せの子じゃないとダメなんでしょうね。 今のところ恋が進展してるかは置いておいて。
 現状のエミさんの行動はマサキくんに鬱陶しがられてますけど、諦めるどころか手を緩めることなく押せ押せ。 逃げられても押せ押せ。 家に押しかけて押せ押せ。 ……メンタルの素材は超合金Zだな(確信

 とまあ、ここまで私の勝手なイメージで語って来ましたが、齟齬とか色々とありますかね? 答え合わせはディナーの後でお願いします←



 さて、ここからは1年1ヶ月ぶりの最新話の感想をば。

 マサキくん相変わらずめんどくさいなおい! って言うかエミさんDEBANなし⁉ まあ、メインヒロイン(笑)だもんね!←
 なかなかきな臭い話がマサキくんの元に流れて来ましたね。 ハンドルネームと外見変更アイテムが報酬になっているかもしれないクエスト。 なんとも不確かな情報でありながら、明らかにヤバい匂いがプンプンじゃないですか。 しかも暫定相棒がアスナとか、別の意味でも事件が起こりそうな……具体的にはメインヒロイン(笑)が突撃して来たりとか、アスナ様の護衛(笑)のクラなんとかさんが特攻しかけて来たりして男女4人によるキャッキャウフフなあれこれとかね!(きっとない)
 って言うか最後とかヤバい匂いしかしないですし……ううむ、彼らの道程も平和とは程遠くなりそうですね。 主人公諸兄には強く生きてほしいものです(他人事

 そんなこんなで長々と感想書いちゃいました。
 ではでは、迷い猫でしたー 
作者からの返信
作者からの返信
 
 ご感想ありがとうございます。ぶぶ漬けどうぞ(オイ)。

 まずはお褒め頂いた描写から。これは素直にとても嬉しいですね。正確に、精緻に、しかし簡潔に。言うのは簡単ですが、実際書こうとするとこれほど難しいことはなく、日々頭を抱えながらひねり出しておりますが、その成果か皆様にお褒めいただけているのでとても自信になります。

 続いてマサキ君について。結構ボロクソ言われてますが、大体そんな感じです(笑)。
 これは私の視野が狭いせいですが、巷の(特に二次創作の)主人公って、なんだか「カッコ良すぎる」ように思えてしまうんですよね。
 仲間や友達を大事にして、常に前だけを見続け、些事には囚われず、勇敢に自分の道を貫きとおす。確かにカッコいいですし、そんな人間になれればと思わず夢想してしまいそうになるような人格ですが、あまりにカッコよすぎて感情移入ができないというか、どこか遠いところの存在に思えてしまって仕方ないんです。で、だったらそれとは正反対の、臆病で、優柔不断で、なまじ頭がいいだけに行動する前に結果を決め付けてしまいがちな主人公を書いたろやないかい! というところで生まれたのがマサキ君でした。これからもそんなマサキ君をやきもきしつつ見守って頂けると嬉しいですね(笑)。

 お次はメインヒロイン(笑)さんですが、彼女がヒロインの座をイマイチ奪いきれていないのは彼女の責任ではありません。ただ元カノが強すぎただけなんです(白目)。
 彼女の場合、マサキ君の性格が相当アレなので、グイグイ押しまくるキャラというのは最初から決まっていました。そこへ、マサキ君との接点やら恋の始まりを肉付けしていくにあたって孤独だったり、それに対する少し歪んだ解決法だったりというところが加わっていったわけですね。
 この孤独ですけど、僕はSAOが孕む様々な問題の中でもかなり重要なものだと考えています。だって今日にも死んでしまうかもしれない世界に、一部の幸運なプレイヤー以外は自分を知る人が誰もいない状態で放り出されるわけですから。そこで自分の居場所を何とか作ろうと無理を重ねた結果、今度は何とか確保した居場所を守るため更に無理を重ねなければならない……といった負のスパイラルは、彼女以外にも容易に起こり得たものではないかなと思っています。
 後はエミさんの肉食部分が強調されていますが、彼女の場合アレでちゃんと一線は引いています。四六時中周囲の顔色を窺いながらゲームをプレイしてきた人なので、本当に嫌がるラインを見極めるのはとても上手なんですね。となると必然的に、マサキ君は表面上鬱陶しく思っているように見せてはいるけれども本当はそこまで嫌がっていない、ということになり、彼のツンデレさが更に強調されるわけです(笑)。

 最後は最新話についてですね。この話はクライマックス部分における起承転結の「起」に相当する部分ですから、ここから話が転がっていきます。(クラなんとかさんはともかく)事件も起こるでしょうし、ちゃんとメインヒロインのDEBANもありますから、どうぞご期待くださいませ。