「外伝 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)」の感想

DD13
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良い点
【IF物語 ベルセルク編(第七話)】
さあ、窮地に追い詰められたローエングラム候はどうするのか?いや、彼はそもそも窮地に追い詰められている事が認識できているだろうか?
ヴァレンシュタインの要求を吞(の)むのは矜持(きょうじ)が許さない。
しかし、百万人以上の平民、下級貴族の将兵たちを見捨てる事は己の支持基盤を失う事に成る。焦土作戦に加えて、さらに失点を重ねる事はリヒテンラーデ候に処断の理由を与えてしまい、旗下の将兵たちの離反すら招きかねない。
ミュラーに責めを追わせれば、配下の提督たちの忠誠を失う恐れもある。
緒戦で手痛く鼻っ柱をへし折られた恨みと、プライド(だけ)は、十二分に高いローエングラム候が冷静に成るとは思えない。さらに、総参謀長が彼の怒りを煽(あお)るだろう。
(ローエングラム候ではなく)総司令部が提案を拒絶すれば、先の作戦で懐に取り込んだ六千隻のシュターデン大将配下の軟弱な連中と違い、たたき上げの一万隻のケンプ艦隊はそっくりそのまま、貴族連合軍(ヴァレンシュタインの配下)に組みするだろう。
追い打ちをかけるように「私はローエングラム侯は信じるがオーベルシュタイン総参謀長は信じていない。」という、総参謀長に対する不信任は、総司令部に楔(くさび)を打ち込む。
十重二十重に策を張られ、更に暗黒面へ引きずり込もうとする総参謀長の存在に、ローエングラム候は冷静に自分の感情を抑えて、判断する事ができるとはとても想定できない。
ヒーローが、ダークヒーローに滅ぼされていくのは、背筋がゾクリとするほどの黒い愉悦に浸る事ができる。
2%でも勝利の可能性があるというのは、満更でもない。怨念にまみれて目を開いたまま横たわるローエングラム候の亡骸の眼を閉じてやって瞑目するビスクドールが観て見たい。
 
コメント
【IF物語 ベルセルク編(第七話)】
あんなに可愛(かわい)かったエーリッヒ君が、酒は飲むは、腹黒くなるは、でヴァレリー姐さんは悲しいだろう。そもそも、姐さんはこっちに来ていない?
彼の身の回りを世話する女性はいるのだろうか?ちょっと、彼の周りに華が欲しい。
平民でありながら、幾らブラウンシュバイク公の後ろ盾があるとはいえ、大将にまで出世しているという事は、【美しい夢編】同様にお館(やかた)様は彼を取り込む気満々なんだろう。この戦乱を生き残る事ができれば、彼を娘婿にする事に異議を唱(とな)える者は誰もいないだろう。すると、婚約者(仮)からのヴィデオレターとかが届くんだろうか?