「銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)」の感想

tukiyomi
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コメント
更新お疲れ様です。

第八次イゼルローン攻防戦終了。原作通り同盟軍の大勝利となりました。
で・・・この戦役による影響はというと。

まずヤンの存在感が高まることは間違いないです。
エリヤもあの最悪の状況下で援軍到達まで粘ってのけたのは特筆べきことなのですが、帝国軍を追い払ったのはヤンの能力。
同盟内におけるヤンの人気はさらに上がるでしょうし、今回の非公式的な査問会議の件も考えると、短期的にヤンを排除することは不可能になったかと。

だが同時に、ヤンの限界を示した戦役でもあったのかなと。
繰り出す命令には誤りがないのですが、圧倒的なまでに相手への配慮がない。
3軍が足止めしている間に駐留艦隊が各個撃破というのは、裏を返せば「駐留艦隊が最大の功績を得る」と見られてもおかしくない代物。
戦力を消耗しているエリヤはともかく、パエッタ辺りは屈辱と捉えても無理はありません。第一艦隊は士気・練度共に問題ない訳ですから。
結局、ヤンは、イゼルローン方面軍の連中のこれまで以上の信頼を得る代わりに、他の艦隊将兵から「何だこいつ」という違和感を持たれたのではないかと。
「この司令官は自分達と何かを共有する気が無い」これが全てですね。
司令官と兵卒の意識が断絶しているって、帝国領侵攻作戦やグリーンヒルのクーデターの末路を見ると、最終的には碌な事にはならないのですが。

そしてエリヤ。
トリューニヒトからすれば満点ではないが及第点でしょう。
一番良かったのは独力で帝国軍を粉砕することだったのでしょうが、用兵能力のまずさがクローズアップされることになりましたし。(ただしそれはエリヤの能力云々超えているものでもありますが)
ただし、援軍が来るまで防衛しきった事と、イゼルローン方面軍でも半ば浮いていたメルカッツを登用し成果を上げるなど、代理司令官として功績を挙げていますし、更に言えば自ら先頭に立って味方を鼓舞するなど、指揮官としても「怯懦」という評価は与えられることはないでしょう。

それにしてもヤンとエリヤって見事なまでに対照的というかなんというか。
片やエリートで且つ天才的戦術家、しかし徹底的な個人主義のヤンに、兵卒からの叩き上げで努力家、用兵はまずいが周囲との協調と意識の共有を重視するエリヤですから。そりゃ比較する人間も多くなりますし、対立をあおる人間も出てきますわな。

最後に帝国軍。
キルヒアイスの双璧は、ワーレンにプレスブルグですか。
これ本格的にルッツ退場してしまったのか。
それとこの大敗によってキルヒアイス派の復権は遠のくわけですが、キルヒアイス派を抑えていたであろうプレスブルグの失脚って、何気に派閥対立を深化させるフラグになっているんですよねえ。